「長距離砲リチャード氏の謎覚醒」だ。ソフトバンクの大砲候補リチャード内野手(20)が16日、育成3年目にして支配下選手登録を勝ち取った。

昨年まで主に3軍でプレー。今春キャンプでA組(1軍)に抜てきされ、飛び級の勢いで2桁背番号を手にした。謎と言っては失礼だが、昨年の2軍打率が0割7分7厘だったことを考えれば、思いもよらぬジャンプアップだ。

189センチ、112キロ。20歳とは思えない、恵まれた体格からのパワフルな打撃は他の誰にもまねできない魅力があるし、当然、血のにじむような努力を重ねてきたことは想像に難くない。それでも何より、リチャードの魅力は物おじせずに人の懐に飛び込んでいける明るさ、人懐こさだと感じている。

昨年から自主トレで師事している西武山川をはじめ、今年は新入団バレンティンとキャンプ中に早くも打ち解けた。職人のようなオーラを放つ長谷川にも切り込み、打撃論やプロ野球選手としてのあり方を遠慮なく質問攻めにできるタフさがある。

冒頭のフレーズは現在放送中の人気アニメ「宝石商リチャード氏の謎鑑定」を文字ったものだ。ちなみにこのアニメでは中田正義という青年がリチャード氏の相棒役。ソフトバンクにも名前の似ている田中正義投手がいるが、リチャードは「正義さんとも仲いいですよ。いろんな話をします。ご飯連れて行ってくださいって言ってるんですけど、なかなか連れて行ってくれないんですよね…。また強引にお願いしようかな」とこちらにもグイグイと食い込んでいる。まあこれは完全に余談だが。

ところでこの日、同じく支配下登録された尾形とリチャードは17年育成ドラフトの同期入団だ。6人いる「17年育成組」はプロ1年目の18年に登録された大竹、昨年の周東に続き、3、4人目の昇格となった。まさに「伝説の育成ドラフト」だ。球団スカウトたちがアニメのリチャード氏のように鋭い審美眼で選んできた原石たちが磨かれ、宝石になろうとしている。リチャードもこれからより一層の輝きを放つだろう。【ソフトバンク担当=山本大地】