マスク姿の阪神藤浪晋太郎投手が写った写真を眺めてみた。いつになく表情がこわばり、緊張しているように見えた。

会見は新型コロナウイルス感染拡大の可能性を少しでも減らすため、最少人数による代表者取材。記者も会見場には入らなかったので、一問一答と写真から思いをくみ取った。

約1カ月ぶりとなった肉声。藤浪は「反省しています」「軽率だった」「申し訳ないです」といった謝罪のフレーズを計10回も使っていた。文字で2800字を超えた一問一答の中で、藤浪が何度も口にした「まさか自分が…」というフレーズを脳裏に焼きつけておかなければと思う。

藤浪がコロナ感染の有無を調べるPCR検査を受けることが発表された3月26日を境に、日刊スポーツ虎番の日常も一変した。外出して取材対象者のもとへ向かうケースは激減し、基本は在宅勤務でオンライン取材する形となっている。

記者は遊軍という立場だが、4月も阪神を多く取材する予定だったこともあり、この1カ月はほとんどが在宅勤務。何より、コロナに対する危機意識が一気に高まった。ただ、身近な取材対象者が感染していなければ、ここまで意識を高められていたかどうか、正直分からない。

藤浪ら3選手は感染判明直後、3月14日に大人数での会食に参加していたことなどを非難された。外出自粛ムードが高まる中、スキがあったと指摘されても仕方がない。3選手を心の底から応援していたファンからすれば、裏切られたという感情が芽生えるのは当然なのかもしれない。

ただ、世界中がコロナ禍に苦しむ状況下では感染例を見聞きした時、必要以上に相手を批判し続けることよりも、大事なことがあるのだと気付かされる。あらためて自分自身の行動を省みて今まで以上に当事者意識を持つことの重要性を、記者は3月26日以来、実感している。

藤浪はこの日、神妙な面持ちで反省していた。「『まさか自分が』と思って疑わなかった。自分が(コロナに)かかっているのではと思って行動する方が、拡大防止につながるのかなと身に染みて思いました」。コロナとの闘いは長くなりそうだ。「ちょっとぐらいいいか」と油断しそうになった時、藤浪の言葉を自分自身への戒めに使いたい。【遊軍=佐井陽介】

甲子園球場に隣接する球団事務所で記者会見する阪神藤浪(代表撮影)
甲子園球場に隣接する球団事務所で記者会見する阪神藤浪(代表撮影)
甲子園球場に隣接する球団事務所で記者会見する阪神藤浪(代表撮影)
甲子園球場に隣接する球団事務所で記者会見する阪神藤浪(代表撮影)