広島遠藤淳志投手(21)にとって、多くの経験を積んだ1年になった。昨年は中継ぎとして34試合に登板しブレーク。志願の先発転向で臨んだ今季は、開幕から九里とともに先発ローテーションを1度も離れることなく完走。19試合に先発し、5勝6敗、防御率3・87で3年目を終えた。

常に「不安」と戦いながらのシーズンだった。開幕直後こそ苦戦したが、7月12日中日戦(ナゴヤドーム)で先発初勝利。8月2日巨人戦(東京ドーム)ではプロ初の完投勝利を挙げた。しかしそこから約2カ月間勝ち星が遠ざかった。「何がダメなんだろう」。自問自答を繰り返しながら、試合で投げ続けていた。

転機となったのは10月21日の阪神戦(甲子園)。課題だった初回にマルテに左中間への2ランを浴び、暗雲がたちこめた直後の2回、マウンドに上がる前に、遊撃を守る田中広の一言に背中を押された。

「自分のタイミングで投げたらいい。ミットめがけて、逃げずにゾーンで勝負してみろ」

遠藤は助言を胸に、前に突っ込みがちだった上体の動きを修正し、自信を持って投げ込んだ。2回から6回までわずか2安打に抑え、9奪三振と力投した。試合は敗れたものの、翌週28日ヤクルト戦(マツダスタジアム)は7回1失点で白星をもぎ取り、今季最終登板となった11月4日巨人戦(マツダスタジアム)では9回1失点の完投勝利で締めた。遠藤は「アツさん(会沢)だったり、広輔さんとかいろんな人に助けてもらいながらできた1年間だったと思う」と周囲に感謝した。

一息つく間もなく、11月はみやざきフェニックス・リーグに参加し、「直球の制球力」をテーマに技術に磨きをかけている。「終盤にかけてよかった投球をもう少し明確にしたい。僕は真っすぐのキレだったり、質で勝負するタイプだと思う。しっかりゾーンで勝負して、結果として出したい。もっと追求していきたい」。まだ21歳。磨き上げた直球を武器に、4年目はマウンド上でどんな姿をみせるのか。胸が高鳴るばかりだ。【広島担当=古財稜明】

10月21日、阪神マルテに中越え2点本塁打を浴びた遠藤
10月21日、阪神マルテに中越え2点本塁打を浴びた遠藤