ページをめくる度に、また強くなれる。オリックス田嶋大樹投手(24)は、現代のネット社会において希少な“絶滅危惧種”なのかもしれない。

読書が好きだという左腕は、日頃から2、3冊、本を持ち歩いており、新幹線や飛行機での移動時、ときには遠征先のホテルで読み進める。

携帯電話やパソコン、SNSアプリなどで簡単に情報を検索できる現代社会。本へのこだわりを聞いてみると「本以上にいい『教科書』があるのかなと僕は思ってます。社会人になってから、いろんな本を読むようになって…。本を書くには、それ相応の知識、筆記力、語彙(ごい)力がないと、書けないと僕は思っています」。田嶋の説明は、もっともだと思う。

「本屋に行けば、その分野のスペシャリストが書いている本を読める。僕に今不足している知識に、本屋に行けば触れられる。(本屋は)いろんな部門に分かれて(本が)置いてあるじゃないですか。だから、そこで、必要な知識だけを取り入れればいい。その本を買って、知識豊富な人が書いた本を読んで、『ああ、こういうこともあるんだ』って。いろんな角度から考えられる」

ネット検索の結果は「あまり信じないですね…」とポツリ。食生活の意識もメンタル面での取り組みも「自分に必要な知識は、本で取り入れているという感じです」。最近、手に取ったのは「天才を殺す凡人(著・北野唯我)」で、「面白い題名だったんで。興味本位で、息抜きです」と明かした。

ただ、書かれている全ての内容を信じ込むわけではなく「結局、(内容を)覚えてないですよ」と笑う。

「本って、その1冊で、1文字、自分にグッとくるものがあったらいいんです。大事なのは、その瞬間なんです。だから、覚えてないです。そのとき必要だった言葉を探して(本から)もらって、行動して、じゃあ次いこう! って」

何百ページと読んで、胸に残るのは一文節でもいい。「必要だなと思ったら、また買います」。

コロナ禍での取材は、できる限り短時間に。世の中が落ち着いたら、「田嶋大樹」という分野の本を、もっと読んでみたい。【オリックス担当 真柴健】

ロッテ対オリックス ロッテに勝ち勝利投手となったオリックス田嶋はファンに手を振る(撮影・垰建太)
ロッテ対オリックス ロッテに勝ち勝利投手となったオリックス田嶋はファンに手を振る(撮影・垰建太)