巨人坂本勇人内野手の「リーダー力」が際立つ。キャプテンを置かない侍ジャパンでの言動、振る舞いは、現代社会におけるリーダーの理想像を体現しているようだった。金メダルを厳命された東京オリンピック(五輪)で、期待に応えた。劣勢をはね除け、接戦を勝ち上がった。チーム最年長はネガティブな思考を排除し「打てなかったらとか、勝てなかったらとか、ミスしたらっていう心境はしたくないと思ってますけど」と言い続けた。

重圧から目を背けたわけではない。球界を代表して集結した24人のプロ集団。使命を受け止めてグラウンドに立った。「試合前に(みんな)緊張するって言って、やってますし、特別な大会だなとやりながら感じます」とチーム内の雰囲気を表現。年下の選手たちと肩を寄せ合い、思いを共感、共有しながらチームの輪を固めていった。

巨人に戻ってもスタイルは大きく変わらない。再開カードの中日3連戦は初戦の13日に3安打猛打賞、13戦目の15日はソロ弾を放ち、みこしを担ぐ「わっしょいパフォーマンス」を初披露。チームに勢いをもたらした。強引に集団を引っ張ることはないが、強い気持ちがあるから導ける。上に立つのではなく、寄り添う。仲間を尊重し、信頼する。

五輪期間中にリーダーとしての意識を問われ「あんまり、誰かが引っ張らないとみんなが同じ方向を向いてないなとか、そんなチームじゃないですし、あんまり僕が入り込みすぎて、最年長なんで、あんまりナーバスにならないようにはしてますけど。若い選手も多いんで」と言った。今季ペナントレースの結果が出る後半戦。勝てることもあれば、負けることもある。どう勝つのか、どう負けるのか。坂本の「リーダー力」には学びがある。【巨人担当=為田聡史】

試合前の円陣で声出しする坂本(手前中央)(2021年8月7日撮影)
試合前の円陣で声出しする坂本(手前中央)(2021年8月7日撮影)