日刊スポーツ新聞社のプロ野球選手名鑑が17日、今年も発売された。

ロッテ佐々木朗希投手(20)の紹介文はいつも迷ってしまう。書くのに時間がかかる。

去年は「きっと想像を超えてくる球威とデジタル表示は、何千何万もの新たな目撃者たちをどれほど興奮させるだろうか。マウンドに立てばいつ日本記録が生まれてもおかしくない」と書いた。

今年は「旧来の常識ではなく新時代の物差しで測るべき投手。中6日のフルシーズンを見据える今季、たたき出す数字や数値に夢が詰まる」と書いた。

2年続けて、世に出てから「盛りすぎたかな…」とも思ったが、やっぱりこの投手は想像を超えてくる。19日、練習試合・日本ハム戦(名護)。2022年の打者への第1球で、161キロを投げた。

沖縄・名護は気温20度とはいえ、まだ2月の半ば過ぎ。誰がその1球目に、プロ入り後最速の直球を投げると想像できるだろうか。しかも佐々木朗本人は前日に「試合感覚などを確かめながら丁寧に投げたいと思います」とコメントしていた。不意打ちの1球に「おうっ…」と自分でもよく分からない声が出た。

擬音語のザワザワが本当にザワザワと聞こえるようなスタジアム。160、161…と何度も続けば、十分すぎるほどの観測気球だ。自己最速タイの163キロ。拍手は起きたものの、思ったほど大きいものではなかった。場の全員が圧倒されていた。

球団のスピードガンでは最速156キロだった。球場の機器がやや甘めだった可能性はある。とはいえ、明らかに空気を支配した。去年の夏、五輪中断期間で明らかに球威が増し、このオフも体が大きくなった。練習計画を立てることを「自分の中でもすごく好きな時間」と口にしたことがある。充実の証拠が、いきなり数字と空気感に表れた。

この1年間、本当に、いつどんな球が投じられても不思議ではない。前回の163キロから今回まで、1050日の月日が過ぎた。次の「163」は何日後だろう。投手の価値は球速だけではないと十二分に分かっていながら、佐々木朗希の球速だけはどうしても気になってしまう。【ロッテ担当=金子真仁】

2月19日、日本ハム戦に先発したロッテ佐々木朗希
2月19日、日本ハム戦に先発したロッテ佐々木朗希
2月19日の日本ハム戦で、2回まで無失点に抑え、松川(右)と話しながらベンチへ戻るロッテ佐々木朗希
2月19日の日本ハム戦で、2回まで無失点に抑え、松川(右)と話しながらベンチへ戻るロッテ佐々木朗希