先日9日の「現役ドラフト」で、広島から正随優弥外野手(26)が楽天に指名された。長距離砲として期待されながら、4年で21試合、打率1割2分1厘、2本塁打。今季は1軍出場がなかった。熾烈(しれつ)な外野争いなどから、思うように出場機会を得られていなかっただけに、今回の移籍はひとつのチャンス。指名発表時には本人も「新天地で活躍する姿をお見せできたら」と意気込みを語っていた。

正随は11月21日まで宮崎・日南市で行われた秋季キャンプにも参加していた。新井良2軍打撃コーチから熱心な指導を受けながら精力的にバットを振る姿が印象に残っている。ある日の練習中には、新井監督とも数分間、話し込む姿が見られた。本人に聞くと、技術指導ではなく「新井さんの(プロ野球人生における)ターニングポイントを聞きました」という。

同じ右の長距離砲で、大学からドラフト6位で入団した共通点がある。ただ、入団4年も苦しむ自身とは違い、新井監督は入団4年目には全試合に出場。チームの中軸に成長していった。そんな指揮官の分岐点を知りたかったのだ。ときにうなずき、ときに身ぶり手ぶりを交え、新井監督は言葉と表情、動きで伝えてくれた。

「俺も昔はグリップを下げて、下からかち上げるように打っていたけど、(スイング時の)肩、腰、膝のラインを平行にしてから良くなった」

名球会入りする指揮官が若手1人に理解者として向き合ってくれた。言葉以上に心に染みた。コーチ陣からの指導とともに、新指揮官からの助言もあり、秋季キャンプは実り多きものとなった。直後に訪れた楽天移籍-。22年秋が、正随のプロ野球人生の「ターニングポイント」となることを願っている。【広島担当=前原淳】

広島秋季キャンプ 打撃練習をする正随(2022年11月15日撮影)
広島秋季キャンプ 打撃練習をする正随(2022年11月15日撮影)