阪神の谷川昌希打撃投手(30)が、新天地で試行錯誤の日々を送っている。東農大、九州三菱自動車を経て、17年ドラフト5位で阪神に入団。21年に金銭トレードで日本ハムに移籍し、昨季限りで現役を引退。今年1月からバッティングピッチャー(BP)として阪神に戻ってきた。私が記者1年目の18年によく話を聞かせてもらったこともあり、第2の野球人生をスタートさせた現在の心境に迫ってみた。

1月の球団年賀式でBP就任のあいさつをした際には「選手時代から気持ちよく打たすのが得意でしたので、バッティングピッチャーは天職だと思っております」と自虐を挟んで笑いを誘った。現役時代と同様に「投げる」ことが仕事ではあるが、「めっちゃ変わりました。肩肘とか、投げる体力的には大丈夫ですけど。打たせることは難しいです。(奥が)深いと思います」とうなずいた。

「抑える」から「打たせる」仕事になったことで新たな発見もあったという。現役時代は気迫のこもった投球で打者の内角をズバズバ突くことが持ち味だった。ただ、「抑えることって簡単って言ったら失礼ですけど、あんなシャカリキになって投げなくてもよかったんだなっていうのは、BPになってちょっと感じましたね」と明かした。

現在は先輩BPのアドバイスをもらいながら、打者によって狙い所、スピードなどを変える工夫を凝らしている。「人によってポイントというか、気持ちよく打てる場所が違う。そこが難しいですね。選手は球が速い方、遅い方がいいのかとか、人によってスピードは変えるようにしてます」。2月春季キャンプ中には岡田監督から「ちょっと速ないか?」と言われたこともあるという。

当面の目標は「イップスにならないこと」と掲げた。「現役の時は『絶対イップスにならんやろ』と思っていたんですよ。BPになった瞬間に(真っすぐの軌道が)カットするんですよ。右バッターに当てちゃいけないから」と頭を抱える。「今のところは大丈夫ですけど、シーズンに入るとバッターのピリつき方も変わると思う。気を使いながらボチボチやっていきます」。選手のみならず、背番号107の奮闘にも注目していきたい。【阪神担当=古財稜明】

22年11月8日、12球団合同トライアウトで投球する日本ハム谷川昌希
22年11月8日、12球団合同トライアウトで投球する日本ハム谷川昌希