阪神村上頌樹投手(26)の涙に、1敗の重みを感じた。27日のマツダスタジアム。広島との延長12回、末包に適時打を浴び万事休す。サヨナラ負けとなった。村上は泣いていた。仲間たちが肩を支えるシーンがあった。

その姿を見て、村上に教えてもらったエピソードを思い出した。

智弁学園(奈良)の3年春にセンバツを制した右腕は、夏もV本命候補だった。ただ、夏の甲子園は2回戦で鳴門(徳島)に敗戦。当時は「僕まで泣いてはチームに申し訳ない」と涙をこらえたという。

この時の心境をあらためてたずねたことがある。本音は「やっと終わったんだな、と思いました」。高校野球生活が終わった悲しみよりも充実感が勝っていたと振り返る。

センバツを制した後、練習試合1つでも相手は「智弁の村上や」と意識して臨んできた。ヒットどころか、ファウルを打たれただけで球場がどよめく。人知れずプレッシャーと戦っていた。だからこそ、夏は負けても解放感が強かった。涙が出なかった。

そんな村上が人目をはばからずに泣いた夜。「結局、サヨナラ負けしたので自分のせいで負けた。失投です」と唇をかんだ。「ヒットは何があってもヒット。そこは変わりない」と潔く負けを認め「しっかり低めに投げていればアウトになっていたと思う。高めに浮いた分、超えたんだと思います」と続けた。

高校野球とは違いシーズンは続く。ただ、高校野球と同じで一発勝負の短期決戦がやってくる。昨季リーグMVP右腕にリベンジの機会はあるはずだ。涙の分だけ強くなれると信じたい。【阪神担当=中野椋】

広島対阪神 あいさつを終え桐敷拓馬(左)の手が伸びる中、ベンチへ向かう村上頌樹(2024年9月27日撮影)
広島対阪神 あいさつを終え桐敷拓馬(左)の手が伸びる中、ベンチへ向かう村上頌樹(2024年9月27日撮影)