令和になって初めての夏。気になる野球人の今を伝えます。

荒川の河川敷に吹き付ける強い風と強い直射日光を浴びながら、ヤクルト畠山和洋内野手(36)は前に進んでいる。

15年に打点王を獲得した畠山の打撃。リーグ優勝にも貢献した
15年に打点王を獲得した畠山の打撃。リーグ優勝にも貢献した

汗を流している場所は2軍の戸田球場。下半身のコンディション不良と、長期間にわたって向き合っている。キャンプを2軍でスタート。シーズン開幕後も、まだ1軍での出場はない。

コンディションの最大値が10なら、現状は5~8の間を行ったり来たりしている。「今日は悪いな」と思う朝もある。状態を見極めて練習内容を変える。8の時は、若手と同じフルメニューをこなす。

「いい時は、できる限り負荷をかけてやっている。今できること、キープすることを心がけている」

5月6日のイースタン・リーグ西武戦(戸田)に「4番DH」で実戦復帰した。万全ではなかったが、あえて実戦復帰を選択した。結果は三邪飛と四球。以降、出場を続けている。

「『復帰時期とか、言ってられないな』と思った。後がないと思って、お願いして出場させてもらった。その場その場で仕事を考えて、集中して臨んでいる」

練習中から頭の中はフル回転させている。ボールの捉え方、タイミングなど、1球も無駄にしない以前からの習慣が、より深まっている。

「人が100球打てるところを、僕は20~30球しか打てない。よかった頃を、追い求めない。経験は持っているし、人一倍、打撃について考えてきた。だから、人が目をつけていない部分で打撃について頭を使っている」

昨季途中から代打での出場が増えた。バレンティンが日本記録のシーズン60本塁打をマークした13年は、主に直後を打っていた。大砲が勝負を避けられチャンスで回ってくるが、思うようには打てない。普段は気にならないヤジが耳に入るほど、周囲の声に敏感になった。1打席、1試合ごとに精神面は揺れる。その時の経験から「やることをシンプルに考える」ようになった。

至った境地がある。

「自分に期待しない。相手投手のギアはマックスなんだから、犠飛でいい、右打ちでいいと思って。それで、ヒットが打てたら最高。次に引きずらないことが大事」

今季、ヤクルトは最下位に沈んでいる。複雑な思いを抱きながら、バットを振る日々だ。最近は守備の練習にも時間を割く。イースタン戦では指名打者での出場が続くが「早く守備につきたいですね」と次のステップへ進もうとしている。プロ19年目。扉を蹴破れ-さらなる光に向かって。【保坂恭子】