ニューヨーク州ロングアイランドにあるアトランティックリーグの球団ダックスには、08年に阪神でプレーしたルー・フォード(43)が今もコーチ兼任外野手として現役を続けている。

ダックスのコーチ兼外野手で元阪神のルー・フォード(撮影・水次祥子)
ダックスのコーチ兼外野手で元阪神のルー・フォード(撮影・水次祥子)

そのフォードが「野球の試合そのものに一番大きなインパクトを与えるのではないか」と指摘したのが、けん制のルールだ。投手はけん制球を投げる際にプレートを外さなければならない。「左投手は特に、一塁走者を走らせない、大きなリードを取らせないことを強みにしている場合が多い。そのアドバンテージが奪われた。彼らにとって非常にタフなルールだ」と言う。

実際にけん制しなくても、投げるそぶりを見せながら走者を一塁にとどめておく駆け引きは、投手が試合を作る上での1つの要素。だがこのルールにより、投げるそぶりで走者にプレッシャーをかけることができなくなった。走者を出すと簡単に走られ、大量点になる試合が多くなっている。

導入された新ルールは打者有利なものが多く、投手は適応力が試されている。今季は導入が見送られたが、MLBはマウンドの位置を本塁から2フィート(約61センチ)遠くするという変更も実験しようとしている。

前出のフォードは「投手は60フィート6インチ(18・44メートル)の距離から投げることになじみきっている。あまりにも大きな変更」と指摘。アトランティックリーグ内でも反対の声が多いという。防御率でリーグ上位の好成績を挙げているダ軍の先発右腕ジョー・イオリト(27)は「投球フォームやリリースポイントなど多くの変更を強いられるだろう。自分がどう適応するか、今は想像がつかない」と話した。

高校野球の球数制限など球界のあり方について常に積極的に発言しているカブスのダルビッシュ有投手(33)に意見を聞くと「マウンドの距離は長くなればなるほど、ピッチャーの負担が増える。いいことではないと思います」と反対。実験中のルールが打者有利に変更されたものであることについては「今はむしろ打高投低だと思う。これ以上ピッチャーが苦しくなるようなことはやめた方がいいと思います」と意見した。

新ルールは、試合に動きを出しながら9回を3時間以内に収めるための時間短縮を目指すものだという。スピード感があり点がたくさん入る。それがMLBの思い描く、未来の野球のようだ。(この項おわり)

【水次祥子】