大谷に沸いた今年のメジャーリーグ。米国駐在のMLB担当、斎藤庸裕記者が紙面には書ききれなかった今季の話題を振り返る。

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今季のメジャーリーグは、ジョージア州アトランタに拠点を置くブレーブスが、26年ぶりのワールドシリーズ制覇で締めくくった。1977年からマイナーの指導者を経てブレーブス一筋のブライアン・スニッカー監督(66)が、頂点に上り詰めた。補強で打線を強化した一方で、過去に複数球団を解雇され、独立リーグでのプレーを経て盤石のリリーバーに成長した苦労人タイラー・マツェク投手(31)らの活躍も光った。

毎年、ドラマが生まれるポストシーズン(PS)。活躍する選手の陰で、チームを支える“裏方の選手”の姿も目立った。レッドソックスはワイルドカードゲームでヤンキースを撃破し、その勢いでア・リーグ東地区を制したレイズを3勝1敗で下した。リーグ優勝決定シリーズでアストロズに敗れたものの、快進撃でPSを盛り上げた。一役買ったのが、ホセ・イグレシアス内野手(31)だった。8月末までエンゼルスに所属。大谷の本塁打のたびに先頭に立って喜び、抱き合う姿はファンを魅了した。

ムードメーカーぶりは、レッドソックスに移籍しても変わらなかった。9月以降の移籍では、PSに進出しても選手登録されないルールがありながら、ベンチでチームを活気づけた。同僚の本塁打のたびに洗濯用のカートを押す役を担い、献身的な姿を見せた。コーラ監督は「9月、(PS進出に)貢献してくれたこと以外でも非常に素晴らしかった。彼がいなかったら、我々はここにいられたか分からない」と称賛。チームとして勝つ、イグレシアスの野球への情熱が指揮官の心を動かした。

エンゼルスからドジャースに移籍したアルバート・プホルス内野手(41)も、プレー以外での貢献が注目された。ナ・リーグ優勝決定シリーズの第3戦は代打要員として待機。6回裏、ベンチにある電話の受話器を取り、ブルペンとつないで救援陣の起用のタイミングを知らせようとする姿があった。通常はコーチ陣の役割だが、メジャー21年目の大ベテランが自ら買って出た。主力のターナーが左ふともも裏を痛め、ベンチで足を引きずって歩いていた際も、プホルスは寄り添うように肩を持ち、ダッグアウト裏へと引き揚げた。

レッドソックスもドジャースもリーグ優勝決定シリーズで敗退したが、チーム全体に活気があった。もちろん、選手のプレーや監督の采配が勝敗を左右するが、結果には表れない裏方役の貢献も大きい。イグレシアスとプホルスの献身的な姿勢は、間違いなくチームが一丸となる要因の1つとなった。【斎藤庸裕】(つづく)