今年も残り1カ月。野球評論家の西本聖氏に今季のプロ野球を振り返ってもらうと同時に、高橋由伸監督が退任し原辰徳監督が復帰した巨人について話を聞いた。

-まずは今季を振り返って

西本氏 なんといっても広島のセ・リーグ3連覇。あらためて強さを思い知らされたというか見せつけられた。生え抜きの選手が育ち、育てられ、投打のバランスが良い。それに加え機動力、そして守り。他の5球団よりも1つ上を行っていた。

-広島の課題は

西本氏 日本シリーズで敗れたこと。短期決戦の戦いが課題として残った。一方で日本シリーズで広島を破ったソフトバンクは選手層の厚さがきわだった。さらにCSで、リーグ優勝した西武を破った。どんなに西武が打つと言っても4割、5割バッターはいない。あらためてバッテリーが大事だなと感じた。

-中日に移籍した松坂が6勝を挙げ復活した

西本氏 本当に良かったなと。故障で苦しんでいたことを考えるとファンに勇気と感動を与えてくれた。もちろんまだ完全とは言えないが、ここ一番のピッチングはさすが。精神的な強さを感じた。来季は中6日のローテーションで登板できれば2桁勝てる可能性はある。

-西本さんの古巣、巨人は4年連続で優勝を逃した。さらには高橋由伸監督が辞任した

西本氏 高橋監督が監督になったいきさつを考えると残念でならない。岡本ら若い選手も出てきて「やっと形になってきたな」というところでの退任。もう1年チャンスを与えても良かったと思う。

-原監督が3度目の指揮を執る

西本氏 高橋監督が若い選手を育てた中で、どう勝たせるか。優勝経験も豊富だし、その手腕で、どう強い巨人をつくって行くのかなと楽しみにしていた。育てながら勝つ。難しいことだが、原監督の腕の見せ所だと。しかし、来年どうしても勝たないといけないという状況の中で方向が変わってきたのかなと。

-FAで丸、炭谷、オリックスを自由契約になった中島、新外国人ビヤヌエバも獲得した

西本氏 いつも言っているが1つのポジションを2人では守れない。丸はセンターでポジションが確約されていると思うが、捕手の炭谷、一塁を守るであろう中島や新外国人はどうなのか。捕手に関して言えば小林を育てないといけない。阿部も捕手に復帰する。炭谷にしてもFAで獲得したのだから出場機会を与えられるだろう。小林は打てないと言っているが、今年の日本シリーズではソフトバンク甲斐の強肩が広島の足を封じた。相手のチャンスの芽を摘んでいったことを日本シリーズで見せつけた。そこを考えないといけない。捕手というポジションで、選手をどう使うか。ここが大きなポイントになる。一塁も同様だが、原監督の手腕が問われることになる。

-昨季、今季と大きく負け越した広島から丸を獲得したことは

西本氏 1人取ったからといって解消するものではないと思う。それだけですべてが良い方向に行くとは限らない。一番肝心なのは投手陣の立て直しだと思っている。計算できる投手が菅野1人というのでは厳しい。さらに抑え投手が不在。(左膝を手術した)マシソンは開幕に間に合うか微妙。抑えが決まらないとチーム作りができないと言ってもいい。打撃に関しては丸の加入で今年よりは点が取れるだろうが、一にも二にも投手陣の立て直しが急務。今後、外国人投手の補強を進めていくとは思うが、原監督がどう投手陣を立て直すか。ここに注目していきたい。