なんと不覚だ。そう思えて仕方がない。25日にノーゲームになった中日戦。おいしいことがあった。北谷の球場、つまり中日球団では関係者、報道陣にコーヒーを提供してくれる。これは宜野座の阪神も同じなのだが違うのは、北谷にはいつもサーターアンダーギーをほどよいサイズにカットして置いてくれている。有名な沖縄の銘菓。沖縄ではどこでも見掛ける。

 だがここで食べるものは飛び抜けておいしい。いつも思っていた。すると関係者がこんなことを言う。「これは星野さんの大のお気に入りでね。いつもたくさん用意しているんですよ」。そうなのか。

 いつも星野さんのこと、沖縄のことを書いているのに、中日監督時代の有名な話を知らなかったとは。なんとも情けない。しかも聞けば自分が泊まっている沖縄市のホテルのすぐ近くの店だという。調べると午前7時から営業。宜野座に行く前に寄った。

 「かぼ天の店なかそね」。手作り感にあふれ、ゴロッと大きい。生地にカボチャが練り込んであっておいしい。1個80円。2代目の仲宗根太志さん(62)に話を聞いた。

 「ウチのものを星野さんが喜んでくれてね。中日監督時代、私たち家族を球場に招待してくれたんです。食堂で『これが選手の食べているものですよ』と出してもらって。本当にうれしかった。しかも『どこかに野球のうまいコはいませんか?』とも。こんな一般人にまでアンテナを張っているんだな、と驚いたことを覚えています」

 いかにも星野さんらしい話である。同時に、そんなことを知らなかったとは、とまた恥ずかしくなった。

 星野中日、星野阪神で現役としてプレーした久慈内野守備コーチもそのサーターアンダーギーを食べていた。「おいしいですよね」。星野さんのことを話すと「頑張らないとね」と言った。

 そんな守備コーチ陣の顔がくもったのは投内連係での守備だ。虎番記者の記事にもあるようにミスが続出。なかなかビシッと決まらない。金本監督も納得できない様子。普段ならここでも「何をやっているんだ」とエラそうに書くところだが、この日ばかりは自分の不覚が頭を占めていて、そういう気にならない。

 やってもできないときもあるしな。知っているつもりで知らないこともあるよな。照りつける太陽の下で独り言を言っていた。それでも勝負のときはやってくる。きょう27日に紅白戦、そして28日が打ち上げだ。星野さんが愛した暖かい沖縄に別れを告げ、開幕に向け、阪神の実戦は本格化する。【編集委員・高原寿夫】