いよいよ3月。開幕まで1カ月を切った。3月29日、東京ドームでの巨人戦で2024年シーズンの幕が開く。監督の岡田彰布にとって、開幕で巨人と激突するのは2004年、監督就任の年以来になる。この試合、先発にエース井川を立て、打線も活発。8-3の激勝だった。

あれからちょうど20年。今年の開幕カードを「大事な開幕カード」と岡田はすでに位置付けている。もともと開幕戦は「143分の1。勝った負けたで一喜一憂せんよ」のスタンスだった岡田には珍しい心持ちといえる。「今年は巨人。監督が代わり、阿部新監督がどういう野球をしてくるのか。補強もしているし、最も気になるチーム」。早々と巨人警戒警報を発している。

巨人の開幕投手は戸郷。巨人監督の阿部は明かしている。それでは阪神は誰を先発に送るのか。過去の岡田の開幕投手選定は非常にオーソドックス。2004年から2006年の3年はエース井川を指名。2007年が下柳で2008年は安藤。前回監督の5年の開幕戦は2勝3敗。2023年は青柳でDeNAに勝ち、岡田の阪神監督でのオープニングゲームは五分の星に戻した。

いまは予告先発で、もし奇襲をかけても奇襲にならないシステム。岡田は奇襲を用いない監督だ。それでも3・29に向けて考えを巡らせている。沖縄キャンプ中、宿舎ホテルの自室にホワイトボードを用意。ここに1、2軍投手の投球数を日々、すべて書き込んでいた。それで調整度合いを図るのだが、それが終了した時点から岡田の「逆算」方式が始まる。調整過程を吟味しながら、開幕に向けて逆算での試投をそれぞれの投手に施す。

これは非常にわかりやすいものだ。開幕の3月29日は金曜日。となればそれまでのオープン戦の金曜日に投げる投手が開幕に…。岡田はこういうプロセスを大切にする監督なのだ。中6日でキッチリと仕上げていく。「決戦は金曜日」に向け、寸分の狂いもなくマウンドに立つ。岡田の逆算ローテーションがいまから始まる。

ここ数年、阪神の開幕投手はほぼほぼ決まっていた。メッセンジャーが2015年から5年続けてつとめ、そのあとが西勇、藤浪が2年続け、昨年は青柳…。だが今年は候補が多い。多すぎるのが阪神投手陣の厚みを示すのだが、その中から岡田は誰を指名するのか。安藤、久保田の投手コーチの推しを重要視しながら、「●●」に決まる。

その「●●」は昨年のブレークNO・1の村上か。巨人戦に強い伊藤将か、それとも巨人打線が恐れる才木なのか。さらに実績を重視する岡田である。青柳の一手も十分に考えられる。

今シーズンの最大のライバルとなる巨人。ここは初めにガツンと強烈なパンチを決めておきたい。打線を強化してきたという触れ込みの巨人を力でねじ伏せれば、与える影響は大きい。シーズンを優位に進める上でも、岡田は珍しく開幕戦、開幕カードを重く考えている。これから先、金曜日のオープン戦に先発する投手が開幕の大本命。村上か才木か伊藤将か、それとも青柳なのか。それこそ今年、予告先発がなければ、楽しみはもっと膨らむのだが…。【内匠宏幸】(敬称略)