<イースタンリーグ:ヤクルト17-4西武>◇28日◇戸田


田村藤夫氏(62)は、西武の高卒5年目・西川愛也外野手(23=花咲徳栄)の攻守にわたるプレーに光るものを感じた。課題もあるが、長所を伸ばして行けば、いずれ1軍での結果にもつながる兆しを見た。

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プロならば、できて当然のプレーでも、確実にできるとは限らない。センター西川の動きに、いい部分と、課題を感じた。まず1回裏2死一塁。打者の打球はわずかに右中間よりの打球だった。西川は打球を追うも、届かないと判断。フェンスからの跳ね返りに備え、フェンスを向いて打球処理に入った。

カットマンはフェンスと二塁ベースのほぼ中間地点。カットマンに正確に素早く送球。2死だったが一塁走者はホームにかえれず、三塁で止まった。カットマンへの送球がちょっとでもそれれば1点のケース。打球を追いながらカットマンの位置を正確に視野に入れ送球したことが光った。

続けて2回裏1死一、二塁。打者の中飛を西川はややバックして捕球。ここでもカットマンに素早く送球。二塁走者のタッチアップを防いだ。以上2つのプレーは、プロの外野手としては普通のプレー。やって当然と言えるが、簡単なプレーではない。

カットマンの入る位置は、状況に応じて微妙に変わる。その動きを把握する冷静さが必要になる。そして正確な送球となるが、決して簡単ではない。目測を誤るとワンバウンドになり、場合によってはゴロになってしまうこともある。また肩に頼って遠投し、高投となることもある。

優先されることは、カットマンに捕球しやすいボールを素早く投げること。西川が見せた2つのプレーの良さは、打球を追いながら次にすべき動きをしっかり整理して、精度高くできた点にある。

そう思って見ていると、5回裏には2死一塁でイージーなセンター前に抜けるゴロのヒットで一塁走者の三塁進塁を許した。セカンドベースをゴロで抜けていく当たりで、センターからすれば処理しやすい打球だった。もっとチャージしていれば、一塁走者は二塁で止まっていた可能性が高かった。その前に見せたカットマンへ送球した一連の動きから考えれば、ここは二塁に止めるチャージができるシーンだった。

点差が離れており集中力を欠いた。油断していた、など理由は想像はできるが、あの打球で三塁に進めてはすべて言い訳になってしまう。カットマンへの送球の方がやらなければならない作業がたくさんあることを踏まえれば、こうしたイージーな打球処理は、ほぼ100%の確率でこなしてもらいたい。

打撃では非常に印象に残るバッティングをしていた。第2打席で初球内角スライダーを見逃しストライク。2球目はフォークを空振り。追い込まれた3球目、内角真っすぐを、中越え二塁打とした。

2球目に真っすぐ待ちでフォークを空振りしたと感じた。追い込まれ、2球目のフォークを頭に入れながら、前で打つのではなく、体に近いところで内角の真っすぐをおっつけるようなスイングでとらえた。

真っすぐだけに絞っていれば、引っ張れるボールだが、変化球を頭に入れながらのスイング。内角球をおっつけるようにとらえ、その打球がセンターオーバーとなった伸びに驚かされた。芯で捉えているからだろうが、恐らく右投げ左打ちの西川は、左手で押し込む力が打球に伝わったのだろう。

左の強打者小笠原(道大)を思い出す。右利きの小笠原は左手を鍛えるため左手だけでティー打撃をしていた。その効果があったのだろう。利き手ではない左手でもしっかり押し込むことで、左中間への打球が伸びていた。西川がどんな練習をしているか分からないが、あの打球の伸びには、西川にも左手で押し込む強さを感じる。

このバッティングは長所として印象に残る。今季は35試合1軍で出場しているが無安打。1軍では結果が出ずに苦しいだろうが、いずれきっかけをつかむ日が来るだろうと思う。

なお、第4打席では日本ハムから移籍したヤクルト宮台の150キロの内角に力負けして二ゴロに終わった。左腕宮台の150キロは、球速もそうだが、力のある真っすぐだった。(日刊スポーツ評論家)