痛い。首位ヤクルトが今季お得意さまにしている広島を相手に1点も取れず負けていた。ここで勝てれば7・5ゲーム差に迫れていたところ。だが最後は4番手加治屋蓮が四球をきっかけに失点し、痛恨のサヨナラ負けを喫した。悪いなりに粘投を続けていたエース青柳晃洋で落としたことも痛い。

なにより厳しいのが“コロナ離脱の局面”で敗れたことだ。この日、中野拓夢、糸井嘉男が「特例2022」で登録抹消され、2軍のウィルカーソンも陽性判定を受けた。現状、もっともこたえるのは中野の離脱だろう。

プロ2年目ながら、ここまで1番打者として主力を務めてきた。特に6月から島田海吏、近本光司と結成した「俊足トリオ」は劣勢だったチームの雰囲気をがらりと変えた。開幕9連敗の泥沼から貯金をつくり、2位に浮上するまでになった大きな要因である。

その中野が抜けたこの試合、上位は1番近本、2番島田、そして3番ロドリゲスという並びに。結果として4番の佐藤輝明までが安打どころか出塁すらできず、投手陣を支えることができなかった。中野不在だけが原因ではないかもしれないが、やはり響いたと思えて仕方がない。

他球団と同じくコロナ離脱者が出ている阪神。それがあまり目立たなかったのは直接的な影響がなかったからだろう。クリーンアップの一角・大山悠輔が抜けた前カードの広島戦などその象徴だった。大山離脱で迎えた5日にロハスが本塁打して勝ち、結果的に苦手の広島相手にカード勝ち越しを決めたのである。

主軸が抜けたときに勝てればダメージは少ないが、その反対はガクッとこたえる感じがする。ヤクルトとの直接対決を前に重要なこの6連戦を「大山、中野不在」で戦うのはやはり厳しいと思ってしまう。

「大きな声では言えないけど大事なのは“かかりどき”じゃないかな。こうなってくれば」。ヤクルトに多数の離脱者が出たとき、他球団の関係者が言っていた言葉を思い出した。

いつ、誰が感染するか分からないコロナ禍。早めにかかれば8月末から9月の勝負どころで復帰できるが、その時期に離脱してしまうとダメージだ-。そんな話だった。一理あるかもしれないがこればかりはどうしようもない。救いは代わりに出た木浪聖也がいい働きを見せたことか。今こそ「全員野球」の真価が問われる阪神だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 9回裏DeNA2死一、三塁、大田にサヨナラ安打を浴びベンチに引き揚げる加治屋(撮影・上田博志)
DeNA対阪神 9回裏DeNA2死一、三塁、大田にサヨナラ安打を浴びベンチに引き揚げる加治屋(撮影・上田博志)