おもろない。虎党の本音だろう。甲子園は今季最多4万2620人の観衆。巨人ファンも左翼スタンドにいたが、ほとんど虎党だった。もちろん最大のお目当ては藤浪晋太郎の「甲子園星」。だが結果はほとんど面白みのない試合になった。何より「粘りのなさ」がいろいろなところで顔をのぞかせてしまったと思う。

前日に「いまのTG戦は最多失策合戦」と書いた。この日は失策こそつかなかったが近本光司の目測を誤ったようなプレー、併殺を取れない佐藤輝明など記録に残らないミスが目立った。それは虎番記者の記事に任せるとして、なんとも面白くなかったのは打線の淡泊さである。

近本の3号ソロが出た4回、マルテの中飛で攻撃が終了。その後、5回から9回まですべて3者凡退だ。巨人の繰り出すブルペン陣にまるで無抵抗状態。安打が出ないのはともかく、四球も選べなかった。早いカウントから打つのは現在の阪神のスタイルかもしれないが、それにしても見極めていく様子はなく、あっさり終わった印象だ。

粘りのない点は救援投手の選択にあった気もする。アルカンタラは過去4試合の巨人戦で3度失点している。藤浪の後に出たこの日も4失点で炎上。これで巨人戦の防御率は「29.45」になってしまった。全体が「4.70」なので、これは相性が悪すぎる。

試合の行方が決まってから投げた4番手・加治屋蓮は巨人戦4試合に登板し、防御率「0.00」。通算は「2.19」だ。逆転を狙うには加治屋を先に出した方がよかったのでは…。

アルカンタラが8月26日を最後に投げていない点や加治屋は昇格したばかりなど要素はあるはず。ベンチ裏の事情は分からないけれど結果を見れば負け展開での継投を粘りたかった。「最近ちょっとタラちゃんらしい球はいってないんで、いったん抹消しようかなと思う」。指揮官・矢野燿大は敗戦後に言っただけに余計、そう思った。

そして藤浪だ。3回から6回まで先頭打者を出す。丸佳浩を四球で出した4回は無失点でしのいだが自軍のミスもあって粘り切れない。6回、暴投で失点した場面は先発復帰以来、影を潜めていた制球難を思い出させるだけにドキッとした。こういうシーンはもう見たくない。粘れなかった阪神、首位ヤクルトも2位DeNAも負けていただけにもったいない敗戦である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 7回表巨人2死一、二塁、中野(右)と近本は岡本和の打球をお見合いする形で適時二塁打としてしまう(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 7回表巨人2死一、二塁、中野(右)と近本は岡本和の打球をお見合いする形で適時二塁打としてしまう(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 7回表巨人1死三塁、アルカンタラは坂本に中前適時打を打たれ失点する(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 7回表巨人1死三塁、アルカンタラは坂本に中前適時打を打たれ失点する(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 5回表巨人無死、吉川の打球の判断を誤り、後ろにそらしてしまい三塁打を許す近本(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 5回表巨人無死、吉川の打球の判断を誤り、後ろにそらしてしまい三塁打を許す近本(撮影・狩俣裕三)