そら、こんなんが80何試合できるんやったら、そら、おまえ、アレできるよ。ハッキリ言うて。そういうことやん。そうやろ?
指揮官・岡田彰布風に言えばこうなるかもしれない。オープン戦4連敗のうっぷんを晴らす快勝だ。先発投手が抑え、中心打者が本塁打、長打を放って勝つ。虎党がスカッとするのはいろいろパターンがあるだろうが、これもその典型だ。
興味深いのは前日の完敗からの“流れ”である。24日は2-5というスコア以上の差を感じる完敗。大山悠輔にこそ1発が出たが全体的に意気上がらない試合を、岡田はブスッとした様子で振り返ったものだ。
「(近本光司も佐藤輝明も)まだまだに決まってるやろ。もうちょっと危機感持たなあかんわな。みんながみんなやけど。そんなん伝わってこうへんわな」。主力選手を含めて「緊張感がない」とばっさり切って捨てたのである。
かつての球界では監督が活躍できなかった選手たちに文句を言うのは普通だった。野村克也も星野仙一も自分なりのスタイルでボヤき、気合を入れていた。だが学校、社会で若者を厳しくしからなくなった世の中の流れに応じ、この世界も変化している。
特に阪神で顕著になったのは前任者・矢野燿大のときだろう。選手を責めず、過度の期待もせず、常に寄り添い、背中を押すスタイル。それが悪いとは言わないが、ときにじれったいような印象を受けたことも事実だ。
その点、岡田はズバリと言う。これがいいのか悪いのかと言えば、個人的には好みだが、それこそ世の中的には判断が難しいかもしれない。「選手が萎縮してしまう」という意見もあるだろう。
それでも結果的にベストと思うのはこういう形になることだ。監督が負けた試合で文句を言い、言われた方が、翌日、それに発奮したように活躍する。いかにもプロ野球らしい、興行面でもファンは面白いのではないか。
この日、そのあたりを虎番キャップたちに聞かれた岡田はこんな話をした。「それで打てるんやったら毎日言うわ。毎日言うても効き目ないやろ。たまに言うのがエエんやないか。時期的にものう」。
当然ながら岡田も岡田のスタイルで考えている。若いチームをどうやってアレさせるか。総仕上げのオープン戦はあと1試合だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)