名古屋に来ると、やはり足が向く。闘将・星野仙一の墓参だ。お墓まではまずまずの上り坂。キャリーケースを引っ張り上げて歩くのが、結構、きつい。闘将に言ったら「何を弱っちいこと言うとるんじゃ」と笑われるだろう、と思った。
墓前に手を合わせてから向かったバンテリンドーム。やはり星野ならこう言っただろうと感じる展開になった。「村上が頑張っとるやないか! 何とかせんか!」ということだ。先発・村上頌樹がピンチを迎えながらも得点を許さず、7回無失点。8回に代打を送られた。その間、阪神打線も無得点。村上に白星はつかなかった。
2試合連続の延長戦でこの日は競り勝ちはよかった。だが同時に「惜しい」とも思う。指揮官・藤川球児も村上が勝てなかったことに「それはもう…」と無念の表情を見せたのだ。
今季9度目の登板だった村上はここまで6勝1敗。夢想するのは阪神22年ぶり「20勝投手」の誕生だ。これがチーム44試合目。開幕投手の村上は約5試合に1度、先発した計算だ。単純計算なら残り試合で19度ほど見込めるが、まず、そうはならない。よく投げて計26試合で先発できれば素晴らしいと予想する。ある球団関係者も「いまは年間25度、先発できればいい方ですからね」と話す。
現在、米国で苦闘中の藤浪晋太郎が好調だった頃の話を思い出す。「藤浪くんはスタミナあるし、いつかは20勝やな」と聞いたことがある。彼は「いや、ムリですね」と即答した。「20勝しようと思えば30試合は先発しないとあかんですけど今はそんなに投げられないですからね」。理論派らしくそう説明した。
それを考えれば村上が、もし、26試合に先発できればなかなかの数字になる。残り17試合の先発で14勝のノルマは相当、厳しい。だがシーズン終盤に現実味を帯びてくれば、ベンチが登板機会を増やすようなこともあるかもしれない。
阪神最後、セ・リーグ最後の20勝投手は闘将の下、優勝した03年、エースだった井川慶である。のちに星野は「井川が20勝したのは間違いないけど、オレたちがさせたところもあるんや」と笑ったこともあった。記録達成にはベンチを含めたチームの協力が必要なのだ。もちろん、まだそんな時期ではないし、先のことは分からない。それでも今季の村上にはそう思わせる雰囲気がある。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




