札幌大谷が札幌西を破り、地区代表に駆け上がった。1年秋からエースで4番の岡本凜典(りんでん、3年)が、公式戦では13年秋全道準決勝以来の9回完投勝利。相手を5安打1失点に抑える好投で南大会に進出、初の甲子園出場へ第1関門を突破した。

 約2年の時を経て、岡本に笑顔が戻った。直球は伸び、スライダーは大きく曲がった。9回を投げきったのは、13年秋全道決勝で駒大苫小牧に2-3で惜敗して以来。「気持ち良かった」。少し浅黒くなった額の汗をサッとふいた。

 二刀流を任された1年秋に「残りの行ける甲子園は全部行く」と公言した。最初のチャンスは1点差で涙をのんだが「必ず行ける」と確信した。2年の夏は地区1回戦敗退、続く秋も地区代表決定戦でセンバツ準Vの東海大四に2-5で敗れた。この年は最速は143キロを記録したが制球は安定せず、中継ぎへの配置転換を余儀なくされた。

 今年1月に右ひじ痛を発症し、1カ月投球できなかった。「投げられないなら打つ」と、連日500スイングを敢行。ティー打撃ではケース2箱分のボールを打った。自らの復活を信じ、自宅でも黙々とバットを振った。最後の夏に、2年前の姿が戻ってきた。

 後輩のヤンキース田中と駒大苫小牧で全国制覇を達成した五十嵐大部長(28)は「背番号1。エースの投球だった」とほめた。2回に公式戦初本塁打を左翼スタンドに放った喜多村桂悟中堅手(2年)は「センターから見ていて先輩の投球は頼もしかった。どうしても援護したかった」と振り返った。

 「(甲子園への)ラストチャンスなので、(南大会は)無駄にしないように戦いたい」。岡本は臨戦態勢を整え、頂点へ向かう。【中島洋尚】