新潟商が新潟第一との接戦を6-5で制した。5-0から7回に同点に追いつかれる苦しい展開だったが、最終回に突き放した。5-5の9回2死二塁で、9番・高橋直光(3年)が一塁線への強烈な勝ち越し三塁打。右手親指の粉砕骨折で春を棒に振った昨秋の4番打者が、公式戦復帰の夏初戦で復活した。

 強烈なゴロが一塁線を襲った。5-5で迎えた9回2死二塁。カウント1-1から、高橋直が無我夢中で放った三塁打が6点目を産出した。「打つしかない。それだけを考えて、打った球も覚えていない」。そう話した殊勲者は、三塁上で丸太のような太い右腕を突き上げて喜びを表した。

 楽勝ペースから一転して、相手にゲームの流れを明け渡した。5-0のリードも5回に1点差に詰められ、7回に追いつかれた。しかし、嫌な雰囲気に包まれても高橋直は強気だった。「点差が縮まる方が気持ちは上がる」。158センチと小柄でも、ベンチプレスは100キロのパワーヒッター。昨秋の4番打者は今夏、9番になったが、意に介さない。「どの打順でもチャンスは巡ってくる」と好機を確実にモノにした。

 高橋直が右手親指を粉砕骨折したのは4月3日の練習試合。バットを握る指に死球を受けて4日後に手術を施した。今春は背番号12でベンチ入りしたが、出番はなし。「負けたのはケガをした自分のせい」と、初戦(2回戦)敗退(対新津、1-4)の責任を1人で背負った。

 別メニュー調整中は左手だけでバットスイング。地道な努力を実らせ、復帰した5月の群馬遠征・2戦目の利根商戦では本塁打を打った。打撃には復活の手応えを得ていた。

 春の大会以降、山中政一監督(45)からチームキャプテンに指名された。試合では出塚雄哉(3年)が主将を務めるが、練習時などでメンバーをリードする大役だ。小中を通じて初のリーダー就任ながら、積極的に受け入れた。「(チームの)主将になった方が、みんなを引っ張っていける」。勝利へ、高橋直がチームをけん引する。【涌井幹雄】