もう、弱虫なんて言わせない。8盗塁の札幌丘珠が超積極的な攻撃で、初出場の双葉に7-0と7回コールド勝ち。5度目の出場で悲願の初勝利を挙げた。エースで主将の花香樹(はなか・いつき=3年)が2度の本盗など、大会最多に並ぶ1試合5盗塁をマーク。5回には、二盗、三盗、本盗と立て続けに決める強心臓で、南大会初となる“サイクル盗塁”の珍記録を達成した。

 あっと驚く足攻めが、さく裂した。札幌丘珠3回の攻撃だ。2安打と二ゴロ適時打で、4-0とリードを広げた直後の2死三塁。初球だった。三塁走者のエース花香が、ホームへ猛突進。土ぼこりをあげながら本塁へ豪快にヘッドスライディングし、5点目をもぎ取った。「相手にダメージを与えられると思った。自分の判断。絶対セーフだと思って、走りました」。スタンドを埋めた全校生徒の歓声も、耳に入らない。100%の自信と集中力で、スタートを切った。

 左ふくらはぎに死球を受けて出塁した5回は、相手投手が打者に1球投げるごとに盗塁を決めた。「アドレナリンが出て痛みは感じなかった」と1球目で二盗、2球目で三盗、そして3球目で、再び本盗という離れ業。二盗以外はノーサインで、南大会史上初の“サイクル盗塁”を達成だ。1試合5盗塁と走りまくった揚げ句、投げても「今日は乗っていた」と1安打シャットアウトで、チームに悲願の南大会初勝利をもたらした右腕は「疲れはあるけど、まだまだいけます」と頼もしかった。

 50メートルは6秒台前半。「クイックもけん制も早くない」と相手投手を分析していた。俊足好打の遊撃手として1年時から活躍し、チーム事情で今春、本格的に投手へ転向。14年夏、初戦で駒大苫小牧に0-6で敗れ「駒苫の走塁が忘れられなかった」。チームが目指すのは“公立最強”。道大会で強豪私立を倒すため、練習時間の8割を打撃や走塁に費やした成果が、最後の夏に花開いた。

 金子磨志(きよし)監督(50)いわく「気が弱く臆病者」というレッテルは、これで返上できそうだ。「環境が自分を変えてくれた」と話す主将でエースの大黒柱には今、自信がみなぎる。「優勝して監督を甲子園へ連れて行きたい。少しでも長く一緒に野球がしたい」。今夏で勇退を決めている指揮官へ、恩返しを誓った。【中島宙恵】

 ◆“サイクル盗塁” 日本に正式名称はなく、サイクル安打に倣って「サイクル盗塁」と言われることも。米大リーグでは「ベーススチール・スウィーピング」と呼ばれる。二盗、三盗、本盗と、同一回に一塁から盗塁だけで生還すること。北大会では1979年に士別・加藤和仁二塁手が準々決勝の芦別戦で、94年に砂川北・武井球二塁手が旭川実戦で、それぞれ達成。南大会では初の快挙となった。