長岡大手が村上桜ケ丘に6-5で逆転サヨナラ勝ちした。2-5で迎えた9回。2点を返して4-5とした後の1死二、三塁の場面で、池田誉等(たから=3年)が中前逆転サヨナラ打を決めた。第3シード長岡大手と、昨秋準優勝の村上桜ケ丘の大一番は、劇的な幕切れだった。

 勝利にかける池田の執念が打球に乗り移った。4-5で迎えた9回1死二、三塁の場面だ。カウント1-1から放ったゴロは、投手プレートに当たって高く弾んだ。ボールは二塁手の頭を越えて中堅まで転がっていく。「ここで打たなければ男ではない、と投手の足元を狙って打った」。重い期待を背負いながら、しぶとく逆転サヨナラ打を打った。

 2-5で迎えた9回の攻撃。ベンチ前の円陣だった。鈴木春樹監督(45)は、こんな指示をナインに出した。「1番打者の池田に回せ。いい打者だから回せば何とかなる」。9回の先頭打者は5番金安健太(3年)。5人の打者を経なければ1番に打順は巡ってこない。しかし、先頭が左前安打で出塁すると、池田は「来ると感じた」。その予感は2点を返して4-5の1死二、三塁の好機に実現。「打てる気がした」と打席での予感も、逆転サヨナラ打に結実させた。

 普段の池田は、チーム一の叱られ役。「他の選手の50人分、私に怒られてきた男」と鈴木監督は評した。それだけ、指揮官の期待が大きい選手だった。兄誉志輝(よしき)さん(日大2年)も、新潟県央工時代の鈴木監督が2年間指導した選手だけに気心は熟知。1年の頃から叱って成長させてきた。「いい選手だと、初めて褒めた」と鈴木監督は9回の指示を振り返った。

 「長岡大手も強くなった」。同校OBの鈴木監督は一瞬だけ、泣き顔を見せた。北越との春の準決勝は初回に7点を失いながら、最後は7-8に肉薄。劣勢から反撃するメンタルの強さは実証済みだった。「厳しい展開をはね返して勝てば、チームは強くなると(鈴木)監督が言っていた」。そう話した池田のバットが、チームの強さを象徴していた。【涌井幹雄】