<君の夏は。>

 目に涙を浮かべながらも、すがすがしい笑顔だった。8日の開会式で選手宣誓の大役を務めた佐和(茨城)の主将、原島大輝内野手(3年)の夏が終わった。第4シードの石岡一の岩本匠平投手(2年)に2打数無安打で7回コールド負け。それでも選手宣誓での「1人1人にとって最高の夏になるように正々堂々と戦います」の言葉通りに戦った。「このメンバーで戦えて、僕にとって最高の夏になりました」と満足げだった。

 原島は高校卒業後に、消防士として働くことを希望している。佐和の野球部は、東日本大震災以降、被災地である宮城県石巻市などを、夏と冬の年に2回訪れている。水戸市の石塚観光が企画したボランティアバスに乗り、清掃活動や被災地の現状を見てきた。原島も、入学から欠かさずに参加した。

 15年に発生した茨城・常総市の鬼怒川水害では、浸水した家のがれきや泥をかき出す片づけを手伝った。「思っていたよりも、助けるっていうことはずっと大変で…」。目の前で起きている甚大な被害に、言葉を失った。「今、野球がやれていることは当たり前ではないんだと、ありがたみを感じました」。困っている人を助けたいという思いが、将来の進路を選ばせた。

 夏を終え、9月には消防士になるための試験が控える。「これからは試験勉強と筋トレをしまくります!」。岡英樹監督(49)からは「責任感も強いし、立派な消防士になってくれるとうれしいですね」と背中を押された。野球帽に書かれた「ニコ」の言葉通りに笑顔が印象的な青年は、きっと多くの人を助けてくれるに違いない。【戸田月菜】