茨城高校野球の名門・常総学院は、強打を武器に2年ぶりの甲子園への切符をつかみに行く。

 伝統である試合巧者で機動力を生かした戦い方から、夏に向けては強打に重きを置いた「打ち勝つ野球」に転換。2年ぶりの茨城大会突破に向けて準備を整えている。

 きっかけは昨秋の秋季茨城大会。準決勝で明秀学園日立に4-5で惜敗し、関東大会出場を逃した。佐々木力監督(52)は「バッティングを強化して、打たないと勝てない」と発起。翌日、チームを変えるための「何か」を求め、インターネット通販で5キロ、10キロ、15キロのハンマーを購入しタイヤも準備。昨夏の甲子園で優勝した埼玉・花咲徳栄の名物練習、ハンマーでタイヤをたたくトレーニングを導入した。

 以降、選手たちはバッティング練習の合間等にハンマーを振り下ろしタイヤをたたき続け、上腕や下半身を強化している。1人あたり1日の合計は日によって100~300回にのぼるという。

 昨夏1年生ながら4番に座った菊田拡和内野手(2年)のスイングのヘッドスピードは、ハンマートレーニング等を経て今では165」キロを記録。菊田は「ハンマーでヘッドの重みを感じられるので、ミートも力強くなったと思う」と効果を体感している。昨年6月には通算9本だった本塁打も、今は21本を数える。佐々木監督も「レギュラーメンバーのヘッドスピードは150キロを超える」と夏に向けての順調な仕上がりにうなずいている。

 5月の春季茨城大会決勝では、7-4で明秀学園日立を下し、雪辱を果たす。茨城の頂点を再び取り戻した。右肩のけがから復帰した二瓶那弥(ともや)主将(3年)も5試合で4本の本塁打を放つなど打線も好調で「1番から6番までホームランが出る打線になった」と佐々木監督も目を細める。上位打線の3年生全員が通算2けた本塁打を放つまでに、チームとしての戦い方の変化が数字にも表れている。続く関東大会でも4強入りし、「強打の常総」で夏を迎える決意を決めた。

 打線の強化は、投手陣も信頼を寄せる。エース谷田部健太投手(3年)は、春季茨城大会、関東大会を通じ「あれだけ打ってくれるので安心して投げられた」とチームメートを誇った。谷田部は今も同校グラウンドのベンチに掲示してある、秋の明秀学園日立戦のスコアをこまめに見て、「(あの負けは)本当に悔しかった。最後の夏は勝ちたいと強く思った方が勝てる。気持ちで向かっていく」と気合を入れている。11番を背負って臨んだ昨夏は、準々決勝で藤代に敗れ2年連続での夏の甲子園出場を逃した。「去年の先輩方のためにも、今年は甲子園に行く。100回大会ですし」と語気を強める。

 常総学院ナインは、ハンマートレーニングで鍛え抜いた強力打線にさらに磨きをかけ、茨城の夏を打ち勝つことを誓う。【戸田月菜】