<高校野球茨城大会:牛久栄進5-2日立北>◇14日◇2回戦◇ひたちなか市民球場

 日立北(茨城)は支えてくれた人のために最後まで戦い抜いた。凡打でベンチに帰っても笑顔でハイタッチ。勝利には届かなかったが、上遠野希生(きお)主将(3年)は「笑顔でやりきれた。結果を残して仁志さんに恩返しをしたかったけれど…」と涙を流した。

 昨年8月上旬、学校の用具庫の南京錠が壊され、ボール800球が盗まれた。ノックでは前に構え、内野と外野が一緒に受けることで少ないボールでも練習する工夫を凝らした。落ち込んでいたチームに9月上旬、同県古河市出身で元巨人の仁志敏久氏(46)から11ダースのボールが届いた。「すごい人が僕たちのことを気にかけてくれて、ありがたい」。感謝の気持ちを込めた手紙を書き、そのボールで汗を流した。

 7日、開会式で始球式を務めた仁志氏にあらためて感謝の気持ちを伝えた。仁志氏から「頑張って」と励まされたことは、チームが頑張る原動力の1つとなった。それだけではない。周囲からの支えは上遠野の進路も決めた。「人のために働きたい。消防士になる」。野球を通じて、人を支えることの大切さを学んだ。「仁志さんのおかげでここまで楽しく野球ができました。ありがとうございました!」。

 今度は上遠野が誰かを支える番だ。【戸田月菜】