「ミラクル・カナノウ」再び! 今夏、全国準優勝を果たした金足農が甲子園帰り初戦を鮮やかな逆転勝ちで飾った。エース吉田輝星(3年)ら“レジェンド3年生”が見守る前で、1点を追う9回2死満塁に4番嶋崎響己内野手(2年)が逆転の2点中前適時打を放ち、大館桂桜を8-7で破り初戦突破。世代交代しても、ひたむきに粘り強く戦う「カナノウ野球」のDNAが継承されていることを証明した。

バックネット裏の個室で見守ったレジェンド3年生の前で、新4番の嶋崎がバットに意地を込めた。1点を追う9回2死満塁。初球の真ん中低め直球を中前へはじき返し、土壇場で逆転2点適時打をぶちかました。「打った瞬間、いったと思った。最後まで諦めず、粘って粘って1点ずつ取っていく野球をしっかりできた」。そして「焦りはなかったです」と続けた。甲子園で乗り越えてきた修羅場の数が違う。“新生カナノウ”の船出は、伝統の逆転勝利で飾った。

苦しんだ末に、初戦を突破した。新チーム最初の練習試合は9月1日に行われ、羽黒(山形)に1-21と大敗。嶋崎は「吉田さんのような絶対的エースがいないし、打力は3年生に劣る」と冷静に分析、その後は3年生との紅白戦で調整。先輩との違いを見極め、秋の戦い方は「勝つか、負けるかというよりは自分たちの野球が貫けるか。シングルでつないでいかないと」。今夏の甲子園は背番号11で出番がなかった男がこの日、4安打はすべて単打。有言実行に移せるまで成長した。

偉大な先輩たちからの熱視線を力に変えた。県高野連側の配慮で、球場1階本部席の隣の個室で、吉田らは熱戦を見届けた。嶋崎は「プレッシャーにはならなかった。先輩たちに見守られているような感じで、うれしかった」と笑顔。旧チームの残像がちらつきながらも、中泉一豊監督(45)は「(吉田たちは)最初から結果を出したわけではない(昨秋は県8強)。来年の夏までどれだけ成長できるか」と焦らせなかった。嶋崎は「目先を考えるより1戦1戦、目の前の試合を戦った結果が優勝につながる」と目標は2季連続甲子園出場。継承した“カナノウ”のDNAを胸に刻み、この秋を戦う。【高橋洋平】