筑陽学園のプロ注目右腕、西舘昂汰投手(3年)は甲子園マウンドに手応えを感じた。20日、甲子園練習を終え「投げやすかった」とマウンドを振り返った。2月に腰痛を発症したがもう完全復帰。中学時代は最速113キロも、今春に145キロをマークするまでに成長した。

「まだまだ自分は努力が足りない。150キロを出せるように頑張りたい」。努力することの大切さを身近な存在から教わった。8歳年上の長兄洋介さん(25)だ。福岡県ではトップクラスの進学校、筑紫丘で左腕投手として野球をしながら1浪して東大に合格した。「小学校の時からキャッチボールもしてもらったし、浪人生の時は夜中2時まで勉強していたのを知っていた」。誇れる存在で憧れでもある兄からの言葉を胸に刻んでいる。「雰囲気を読め。野球にはイニングごとに雰囲気がある。その流れをいかに生かすかだ」。昨年秋の九州大会準々決勝、興南戦でも「四球を出したら失点されると感じた時があったが、しっかり踏ん張れた。兄のアドバイスが生きました」と完封勝利につなげた。洋介さんは九州大会も神宮大会も観戦。常に意識してマウンドに立った。

自慢の速球を生かす投手としての醍醐味(だいごみ)も心地よいと思っている。「自分としては完封より、目の前の打者に集中して抑えるリリーフの方が向いているかもしれません」。昨年秋の九州大会初戦の小林西(宮崎)では、0-0で迎えた9回表無死一、二塁の大ピンチで登板。無失点で切り抜けるとチームのサヨナラ勝ちを呼んだ。「あれが一番自信になった」と胸を張る。

父はサッカー。野球部だった東大生の長兄に加え、次兄真吾さん(23)は福岡の名門、筑紫のラグビー部から福岡大ではアメリカンフットボール部で活躍。高校時代はバスケット部だった姉麻代さん(20)は現在、久留米大で陸上部に所属している。なかなかのスポーツ一家である。

西舘 ドラフトにかかればプロに行きたい。でも最後は指導者になって筑陽学園に戻りたい。センバツ出場が決まって小学校時代に所属していたチームの後輩から『夢をもらいました』と言葉ももらい、教えることの大事さを知った。ここまで来られたのも、いろんな人から応援してもらったんで。

筑陽学園入学後から身長は5センチ、体重はなんと20キロも増えた。「右腕がテークバックで体の後ろに回り過ぎててリリースの時に力が入らなかった。そこを修正してきた。自分は人よりリストが強いとも思う。まだ大きくなりたい」。環境にも恵まれ、体格にも恵まれた右腕が、さらなる高みに挑む。