「9」ずくめの快投だった。郡山(福島)の玉置九十九(つくも)投手(3年)が7回4安打1失点、試合時間実質99分(公式1時間40分)の完投で、昨年4強のいわき海星を8-1の7回コールドで退けた。9月9日生まれ(01年)にちなんで付けられた珍名左腕が、27年ぶり2度目の甲子園を目指すチームに吉兆をもたらす。

   ◇   ◇   ◇

最後の打者が一塁でアウトになった瞬間、スコアボードの試合時間は1時間39分を示していた。郡山・玉置は、仲間と喜びあいながら整列。審判が終了をコールした時点で1時間40分となったが、名前に限りなく近い吉兆の完投劇だった。167センチの左腕は最速127キロだが、カーブ、スライダー、チェンジアップを織り交ぜて丁寧にコースを突いた。7回コールド無四球での白星発進に、「低めを意識しながら初回から飛ばしていった。99分ですか? 結構長く感じました」とホッとした表情を見せた。

昨秋から1番を背負ってきたが、不調に陥り今大会から10番。午後9時に帰宅後も、自宅車庫の傾斜を利用してシャドーピッチングを繰り返すなど復活を目指した。先週の練習試合で2戦連続完封。佐藤康弘監督(53)は「相手は右打者が多く本来なら右の大槻(耕大=3年)だったが、玉置の調子が良かったので」と大事な初戦を任した。

9月9日に生まれ「九十九」と名付けられた。幼い頃は、「きゅうじゅうきゅう」とからかわれたが、今では「みんなに覚えてもらえるので、よかったです」と両親に感謝するまでになった。九十九には「長く使った道具に宿る神」という意味もある。郡山が92年に初出場し、延岡工に敗れたのが8月11日。この日で9830日が経過した。角田慧主将(3年)は「うちにもチャンスがある」と意気込む。9900日に最も近づく今年の夏、郡山が復活を狙う。【野上伸悟】