オイスカが第2シードの加藤学園を破り、創部9年目で初のベスト8を決めた。

6月に就任した永井浩二監督(48)が取り組んだ「改革」に応えるように、先発左腕の高橋佑斗(2年)が公式戦初完投、田代太路内野手(3年)が全3打点をたたき出した。ほかにも島田商、駿河総合、東海大静岡翔洋、静岡とノーシード5校が勝ち進んだ準々決勝は、26日に行われる。

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オイスカの生まれたばかりの「永井チルドレン」が番狂わせを起こした。今春準優勝の加藤学園に勝った。先発高橋が5回まで1失点でしのぐと、6回2死満塁から田代の2点適時打で逆転した。岸龍亮主将(3年)は「ビックリです」。昨年まで夏通算2勝が、今夏だけで4勝目。歌うことが格別だった校歌斉唱も、今や堂々と歌い上げた。

全3打点を挙げた田代は誇らしげに言った。「楽しくやれていることが全てです」。チームのモットーは「スマイル野球」。転機は永井監督の就任だった。

5月まで常葉大浜松を約12年間率いていた指揮官は6月の就任後「改革」に取り組んだ。「好きな野球をやるのに、監督の顔色をうかがっていたらつまらない」。丸刈りだった髪形は原則自由。7分間の試合前ノックも「体力が消耗するから」という理由で5分程度で終わらせている。23日の3回戦後は学校に戻らず、愛鷹球場近くの沼津市内に宿泊。異例の前泊で備え、金星につなげた。

同監督は「最初は戸惑ってましたけどね。吸収力が違う」と目を細める。高校生の指導は初めてだ。グラウンドは外野ノックもできない狭さだが、重盗や本盗の練習も積極的に取り入れながら、野球の面白さを伝えてきた。

広島商から亜大を経て、社会人でプレー。プロ入りはかなわず、渡米してニューヨーク・メッツでブルペン捕手を務めた。異色の経歴を持つ指揮官も高校野球ではルーキー監督。それでも、選手とともに「一戦必勝」を掲げ、次戦は昨夏準優勝の島田商に立ち向かう。大会直前の監督交代劇に揺れたチームが急成長。快進撃だ。【神谷亮磨】