<高校野球東東京大会:日大豊山6-1日大一>◇29日◇2回戦◇江戸川区球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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「日大対決」の裏に、逆境を乗り越えた2人の男がいた。日大豊山(東東京)・高野陽太郎捕手は左手を、日大一(同)・早川俊内野手(ともに3年)は、右肩を大会前に負傷。それでも全力で勝利を目指した。

日大一が1点を追う7回2死二塁。早川は、一時同点に追いつく適時二塁打を放った。1年時の6月に右肩を脱臼し手術したが今年3月、再び痛めた。今も満足に送球できない。それでも打撃を買われ、この日は右肩をテーピングで固めて先発出場。渾身(こんしん)の一打に、二塁ベース上で右腕を突き出した。「危なかった。テーピングしていなかったら肩が外れてました」。思わず出たガッツポーズだった。

「2週間前の練習試合で左手有鉤(ゆうこう)骨がズレた」と明かした日大豊山の高野も、ケガの影響を感じさせない活躍をみせた。8回には右翼へ高校初アーチとなる3ランを放つなど、4打数3安打3打点。ケガ以来初めて両手でスイングしたが、思い切り振り抜けた。「初戦に勝ったので、キャッチャーが代わって負けられないプレッシャーがあった」。勝敗こそついたが、痛みに打ち勝った2人の目は、力強かった。【湯本勝大】