4強が出そろった。開幕前から注目の「ロケット四天王」最後のとりで、中京大中京(愛知)のエース畔柳亨丞(くろやなぎ・きょうすけ=3年)が東海大菅生(東京)を2安打に封じ、今大会2度目の完封勝利。24年ぶりの4強入りで、55年ぶりのセンバツ制覇にあと2勝に迫った。138球の熱投で、明豊(大分)との準決勝で可能な投球数は121球となった。

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見えない敵より、目の前の相手に畔柳は全力で挑んだ。9回。先頭を四球で出した。2死二塁からは連続与四球で満塁に。6点のリードはあった。だが、球数が膨れあがった。8回を109球で終えていた。それが9回に3個目の四球を出した時点で137球。明豊相手の準決勝で完投を目指すなら、残る球数は“限界点”に達しようとしていた。それでも、チームの選択は「最後まで畔柳」だった。

畔柳 勝たなければ、意味がない。1球1球ボールに魂を乗せて投げるのが自分のピッチング。最後まで力を込めて投げました。

138球目。5番・小池を141キロ直球で中飛に仕留め、2度目の完封勝利で24年ぶり4強を決めた。

高橋源一郎監督(41)も継投のタイミングをはかっていた。

高橋監督 ただ、うちは一戦必勝。相手の打線の力を考えれば、絶対に流れを渡したくなかった。最後まで畔柳で押しきりました。次のゲームプランは、これから考えていきます。

55年ぶりの春戴冠を託されたエースの強みは、リリースの強さだ。2学年上で畔柳の入学時から球を受け、今は学生コーチを務める小出航平さん(中京大2年)は指の音に仰天した。「球を離した瞬間、バチッと爪が割れたような音がして。大丈夫かと聞いたら、大丈夫です、と」。今年3月に球の回転数を測ったことがある。プロでもトップレベルに匹敵する2500回転だった。「爪が割れたような」音の衝撃を、回転数も証明していた。

97年。高橋監督が正遊撃手だったチームは、決勝で天理に敗れた。その宿敵も、勝ち上がった。

畔柳 達君も素晴らしいピッチングでこれまで1人で投げ抜いてきて、自分の中でも本当にすごい投手だなと感じている。1戦1戦ですが、高橋先生の時には天理が優勝して中京が準優勝。決勝で当たる機会があれば、絶対優勝したい。

紫紺の大旗と大会NO・1投手。どちらも、畔柳が手に入れる。【堀まどか】

▽中京大中京・加藤(畔柳の2度目の完封勝利をアシスト) 序盤、ストレートを張っていたのがわかった。そこでどういう球種を投げるか、事前に決めていた。落差があるカーブのあとの高めストレートは、有効になってくる。カーブの落差のあとにインハイ、真ん中高めでも打者的にいやなストレートだと思います。

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◆中京大中京の春4強 97年以来14度目。決勝進出は過去8度(優勝4度)。

◆愛知対大分 準決勝で中京大中京と明豊が対戦。過去は愛知県勢が大分県勢に対し春夏通算8勝0敗。