夏の甲子園5度優勝の大阪桐蔭が決勝で興国を下し、3年ぶり11度目出場を決めた。

プロ注目の松浦慶斗投手(3年)が9回3失点と力投し、同点に追いつかれた直後の9回に池田陵真外野手(3年)がサヨナラ打を放った。大阪桐蔭が夏の大阪大会決勝でサヨナラ勝ちしたのは初めて。

広島大会は広島新庄が制した。東西の東京大会は2日に決勝を行い、全49代表校がそろう。組み合わせ抽選会は3日にオンラインで実施される。

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土壇場の9回に追いつかれても負ける気がしない。これが大阪桐蔭の強さだ。その裏、2死三塁で主将池田が打席へ。初球スライダーをとらえると左前へ。サヨナラだ。甲子園だ。歓喜の輪が解けて池田が言う。

「あの瞬間はうれしかったけど、春、あんな形で負けている。甲子園でやれるチャンスをつかめた」

3月のセンバツは智弁学園(奈良)に1回戦で敗退した。甲子園で2度、春夏連覇に導いた西谷浩一監督(51)はナインの心を試した。「負けた日もね、宿舎で池田たちが12時くらいまでバットを振っていた。何も言わなくても自分たちが一番悔しさを持っていると感じた」。最速150キロ左腕の松浦も智弁学園戦の1回に4失点でどん底に落ちた。近畿王者になった春季大会は登板ゼロ。走り込みに明け暮れたが、複雑だった。「自分はもう必要ないのかなと思った時期もありました。すごくカツをもらった大事な期間」と振り返る。

決勝は見違えた。序盤から変化球を多投して打ち気をそらし、角度のある速球も投げ込む。9回に2点を失って追いつかれたが堂々の完投。西谷監督も「一番うれしかった」と明かす。前日7月31日関大北陽戦も救援で150キロを連発し、サヨナラ負けのピンチで何度も踏ん張った。大一番の先発を託した指揮官は試合前「連投の方が力、抜けていい」と暗示をかけると明るい声が返ってきた。「2日目のカレーの方がおいしいです。大丈夫です」。自然体で、仁王立ちした。

地獄の強化練習も夏に勝つ王道だ。近畿大会優勝翌日の5月31日から何重にも厚着してマスクをつけて走り込んだ。池田は涼しげに「夏が暑く感じない」と笑う。5週間の猛特訓が炎天下に生きる。西谷監督は「大きな日本一の旗を必ず取って戻って来たい」と宣言した。さあ、18年以来の全国制覇へ。地にまみれた常勝軍団があるべき姿で帰ってくる。【酒井俊作】