第103回全国高校野球選手権の大会本部が長雨による大幅な順延を想定して、甲子園で行う決勝を31日に予定する阪神戦と同日で実施する案を検討していることが18日、分かった。すでに甲子園球場など関係各所と調整に入っている。この日の大会第6日は天候不良で6度目の順延となり、過去最多になった。日程が新たに組み直され、現時点の決勝は28日。今後の天候不順が予想されるなか、非常時に備える。夏の甲子園と阪神戦のプロアマ同日開催となれば、史上初だ。

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予想外の長雨に揺れる夏の甲子園に仰天プランが浮上した。この日も朝から雨が降り、大会第6日の3試合が19日に順延された。期間中、実に6度の順延は史上最多。決勝は最も遅い28日に予定される。悪天候は続く恐れもあり、大会本部が検討に入っているのが決勝を31日の阪神戦と「同日開催」で行う案だ。

大会関係者が「奥の手」や「ウルトラCです」と明かすように、全国高校野球選手権が、甲子園を本拠地にする阪神戦と同日に開催すれば史上初のケースになる。球場など、関係各所との調整は必要だが、興行面で障壁は多くないという。これまでは外野フェンスの広告貼り替え作業などで数日の準備が必要だったが、近年は簡易化された。球場外周の掲示板などの当日の仕様変更が生じるほか、中継テレビ局の機材の入れ替えもあるが、実務的には同日開催が可能の見通しだ。

阪神は、高校球児の熱闘の余韻が冷めないなか、長期ロードを終えた8月下旬に甲子園で試合を再開するのが通例。今年は31日に中日と午後6時から公式戦を行う。通常、ホームの阪神は午後2時ごろから試合前練習を始める。阪神球団との緊密な調整も欠かせないが「ダブル戦」を行うなら午前中の決勝開始が現実的になる。神宮では日常的に東京6大学、東都大学とヤクルト戦が同日開催されるが、甲子園でアマチュア野球の公式戦と阪神戦を同日に行えるか模索している。

日程の繰り下げは選手の体を守る利点もある。体調を管理するための休養日を3日間、設けたが、相次ぐ順延ですでに2日が消えた。過密日程になれば選手の疲労が蓄積し、故障のリスクも高まる。準決勝前日の休養日を確保するためにも、決勝戦を31日まで行える日程のゆとりは球児を救う秘策になる。2年ぶりの大会で、各校は熱戦を展開。大会本部も球児のために最大限、プレーできる環境を整えている。異例の「夏の甲子園決勝&阪神戦」プランを温め、備えを怠らない。

◆阪神と高校野球 阪神はかねて、高校球児に温かいまなざしを注いできた。75年の第57回大会は、5度の順延となり、8月23日、24日に予定していたヤクルト戦を中止して、決勝を行った。昨年はコロナ禍で夏の甲子園中止が決まると、甲子園球場と協力して8月末、日本高野連加盟の野球部と軟式・硬式女子野球部の高校3年生に「甲子園の土」キーホルダーを贈った。矢野監督やコーチ、選手らが集めた約400キロの土をボール型のキーホルダーに詰め、約4万8700個に及んだ。矢野監督は「みんな何かしら応援したい、と。僕たちが土を集めることで、キーホルダーのなかに僕たちの思いも入って、球児に届いてほしい」とエールを送っていた。