近畿勢が夏の甲子園では史上初めて同地区で4強を占めた。近江(滋賀)は9回に春山陽生主将(3年)の適時打で神戸国際大付(兵庫)にサヨナラ勝ちし、20年ぶりの準決勝に進んだ。智弁学園(奈良)は26年ぶり、智弁和歌山は15年ぶりの4強で、初出場の京都国際も躍進を続ける。準々決勝は3試合がサヨナラで決まる激闘だった。27日は休養日で、28日の準決勝は近江-智弁和歌山、智弁学園-京都国際で行われる。

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近江が劇的なサヨナラ勝ちで準優勝した01年以来、20年ぶりの4強進出だ。試合は新野の本塁打などで近江ペースで進んだが、6-2で迎えた9回2死無走者から、まさかが待っていた。エース岩佐が相手打線につかまり、救援で再登板した山田も2点打を浴びるなど4失点で追いつかれた。なお二、三塁。多賀章仁監督(62)は「最後は金足農戦を思い出した」という。3年前の夏の準々決勝、1点リードの9回に2ランスクイズで逆転サヨナラ負けした試合がよぎった。だが山田が川西を三振に仕留め、勝ち越しを許さなかった。

その裏1死一塁で打席には主将の春山。「つなぐ意識で打席に入った」。3球目を右前へ。エンドランのサインが出ていた一塁走者が、頭から決着のホームに飛び込んだ。「あまり記憶がない。ただテンションが上がっていた」。雄たけびを上げ両拳を握りしめた。劇的勝利の伏線は試合前から張られていた。多賀監督は「新野の本塁打でサヨナラ勝ちをする夢を見た」。それを聞いた春山は意識して後攻を選択。「後攻を頼んだぞ、と言われていたので、チョキで勝って選びました」。シチュエーションは夢とほんの少し違うだけ。新野は1発を放ち、チームはサヨナラ勝ちした。

神戸国際大付とは昨秋の近畿大会で対戦。2-1とリードしたが終盤に逆転を許し、センバツへの道を断たれた。甲子園の再戦で最高のリベンジ。さまざまな感情が交錯した多賀監督は感極まり、「まだ信じられない…」と声を震わせた。全ての悪夢を振り切った近江が、正夢のベスト4。さあ、次はV候補の智弁和歌山戦だ。【清水駿斗】

▽近江・岩佐 9回に自分がとんでもないことをしてしまった。チームが勝つことができて、頼もしい仲間だと思いました。(山田にマウンドを譲ったときは)頼むから抑えてくれという気持ち、それだけでした。

◆1日3サヨナラ試合 準々決勝で1日にサヨナラが3試合は春夏を通じて史上初。1日3サヨナラ試合は61年8月13日(1回戦)73年8月9日(同)90年8月13日(2回戦)に次いで31年ぶり4度目。