不屈の心で挑戦する。高校女子硬式野球の宮城・クラーク仙台の山口優生菜投手(3年)が今春、社会人のZENKO BEAMS(ゼンコー・ビームス、埼玉)でプレーすることが決まった。2度のケガを乗り越え、昨年は主将としてチームをけん引。12月には高校女子選抜に選出され、イチロー氏(48=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が友人らと結成した草野球チーム「KOBE CHIBEN」とのエキシビションマッチに出場した。

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心に再び火がついた。山口は教室のホワイトボードに“真っ向勝負”と書き、社会人での目標を掲げた。「最年少なので仕事や野球も慣れて、先輩たちを支えられるような投手になりたい」。創部4年で全国2度の準Vを誇る強豪。だが、昨春の選抜と同夏の選手権は初戦で敗退と、高校野球には悔いが残った。それでも「けがが多い中、みんなに支えてもらいながら野球ができた3年間だった」と笑顔を見せた。

19年、神奈川から入学し、寮生活が始まったが、練習中に右膝の外側半月板を損傷。1年後の20年6月に手術をしたが、同年冬の練習で再発。21年2月、再手術した。3度に及ぶ松葉づえ生活があったが、周囲の支えが力になった。家族からは日用品などのほかに激励の手紙が届き「背中を押してくれた」という。寮生はいつも山口に付き添い、荷物を持って隣を歩いてくれた。「3年生が支えてくれて、自分はけがを治すことを優先できた」とあらためて感謝した。

昨年末、球界のレジェンドに今の実力をぶつけた。エキシビションマッチで7回から登板。1死一、二塁でイチロー氏と対戦した。「バットを前に出すルーティンをいつも画面で見ていたのに、目の前でやっていることがすごいと思って。オーラも全く違った」。気持ちで負けずに右腕を振り、初球のカーブで併殺打に仕留めたが、試合は1点差で惜敗した。「人生に1度(あるか)ないかぐらいの経験ができてうれしかった。(女子選抜に)自分よりも上手な選手がたくさんいて自分はまだまだ」と刺激を受けた。

ZENKO BEAMSの同地区には、同校OGで1学年先輩の小野寺佳奈投手(19)と堀越莉沙外野手(19)がいるエイジェック(栃木)が所属。山口は「(対戦は)ちょっと怖いですけど。でも、楽しみです」。持ち味は制球力とけん制の技術。高校での悔しさを原動力に、社会人でも力投を続ける。【相沢孔志】