韓国の投手力を考えれば、先制点は与えてはいけない試合だった。無失点で終盤のワンチャンスで競り勝つ。それしか展望は開けない。それほどの力の差を感じた。その中で山田に本来の球威がなく、失策も絡んで失った初回の4点が試合の行方を決めた。

韓国の4番打者は浅野をさらにがっしりさせた上に、身長もある。ひと回り以上大きい。ソフトバンクで活躍した李大浩を思わせる体形で、体に似合わず非常にシャープなスイングをする。日本代表と比較した時、技術うんぬん以前の体格差を痛感する。

山田は2回、その4番に対しカウント0-2から148キロの外角真っすぐで空振り三振を奪った。この1球が、この日投じた46球の中で唯一、山田らしいなと思える球だった。制球され、球の力があった。ベルト付近の高さだったが、意地は伝わってきた。ただし、この日も抑えで2点リードを守れなかった1次ラウンド・パナマ戦のように、思うような投球ができずに苦しむ。真っすぐが走らない。スライダーは曲がり過ぎている。修正しようとすると甘くなって打たれる。ツーシームも制球できない。

フィールディングでも精彩を欠く。2回無死一塁でのバント処理の際、天然芝で打球が思ったよりも転がらないと感じ急いで駆け寄るが、膝が使えず、足がぐらついていた(結果は投安)。甲子園での強靱(きょうじん)な足腰ではない。

ピッチングに下半身の粘りが見えない。セットで始動した時、腰がすぐにホームに向かって正対してしまう。もう少しギリギリまで我慢して、腰がなるべく開かないよう力をためてからホームに向かないと、下半身の力が生きない。

センバツと夏の甲子園の10試合で1200球以上。疲れが抜けきれていないと想像できる。代表でも主将を務め、歯がゆい思いをしているはずだ。今大会初の先発で2回持たずに6失点(自責4)。コンディション不足の可能性が高い。

4番を空振りに仕留めたあのボールをアベレージで出せるよう、今後の課題にしてほしい。まだ大会は続くが、この状況では馬淵監督も使う場面に迷うのではないか。オランダ、米国戦のどこかで登板機会があるなら、148キロ外角真っすぐをイメージして、目いっぱい腕を振ってほしい。(日刊スポーツ評論家)