前橋商(群馬)の絶対的エースが、度重なる苦難を乗り越えチームを13年ぶりの夏甲子園に導く。

エースは3年生の坂部羽汰(うた)投手。最速142キロの直球に鋭いスライダーを織り交ぜて打者を打ち取る。「ブルペンではコースに投げ続ける」と磨き続けてきたコントロールも自慢だ。

1年秋からエースナンバーを背負い、同秋の県大会でチームを4強に導いた。だが思わぬ不運が待っていた。秋の大会後に腰椎分離症を発症。「全くトレーニングができなかった」と悔しい冬を過ごした。

腰のケガも癒えて実戦復帰を果たした昨年4月、練習試合前のアップで胸に痛みを感じた。診断結果は肺気胸。手術を余儀なくされた。「周りから置いていかれる。すぐに野球がしたい」と焦りもあったが、チームメートからの「手術がんばれ」というビデオレターに励まされ、1カ月で復帰した。2年夏は背番号「20」でベンチ入り。秋には再びエースの座に返り咲いた。住吉信篤監督(49)は「トレーニングでも手を抜かない。力強く、たくましくなった」とエースの成長に目を細める。

この夏は満を持して万全の状態で臨む。春の県大会では、準々決勝の前橋育英戦で8回途中7失点。逆転負けを喫した。「完投できるスタミナが課題」と練習試合の登板後も投球練習を行うなど、夏へ向け余念がない。「できることはやってきた。夏は悔いが残らないように」とこの夏に全てを出し切るつもりだ。

初戦は7月9日、高崎市城南野球場で東農大二と対戦する。【黒須亮】

◆坂部羽汰(さかべ・うた)2005年(平17)9月20日生まれ、群馬県前橋市出身。小1からリトル大胡スターズで野球を始め、中学は大胡中軟式野球部でプレー。前橋北選抜に選出された。前橋商では1年秋から背番号1でベンチ入り。好きな野球選手はオリックス山本由伸。好きな食べ物はオムライス。簿記1級、電卓1級、情報処理1級を持つ。