旭川明成の千葉広規監督(46)と、長男で左腕エース隆広(3年)の挑戦は、ほんの1歩だけ、夢に届かなかった。「胸張って、こういう時に笑顔でいられる男であってほしいな」。ベンチに戻り、タオルで涙をぬぐう息子の姿を横目で確認した後、父はこみあげるものを抑えながら、優しい口調で言った。

「大会の決勝で、1点差の勝負ができるようなピッチャーになってもらわないと困る」。2年3カ月前の入学時に、父が描いたイメージ通りの投球を息子が決勝の舞台で見せた。失点は5回の1点のみ。打席でもチーム最多の3安打を放って執念を見せ、最後はホームを踏めれば同点の三塁走者だった。「負けた瞬間に、入学してから今までの思いがすべてよみがえってきました」と、背番号1は目を真っ赤にはらし、声を押し出した。

隆広が小学生の時、父が試合を観戦できた日は、自宅に戻って2人でプレーを振り返った。仕事で父が観戦できない日は、長男が試合内容を報告し、コメントを求めた。旭川明成にはそんな「流れで」(隆広)入学。隆広がエースとなった1年秋から、チームは6季連続で道大会に出場。頂点を争う舞台にもたどりついた。そしてラストは、父が息子の入学時に描いた通りの“決勝1点差勝負”だった。

「これから監督といろいろ話があると思うんですけど、プロ入りの気持ちは変わりません。(プロ)志望届は出そうと思っています」と隆広。親子で歩んだ高校野球の道は終わっても、さらに続く夢の向こうへ、息子が一歩を踏み出す。【中島洋尚】

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