大一番を翌日に控え、履正社に最強のパーツが戻ってきた。関大北陽に逆転勝ち。7回、代打で出た坂根葉矢斗捕手(3年)が直球を鮮やかにとらえ、左翼越えにダメ押しのソロアーチを放った。ベンチはお祭り騒ぎ。多田晃監督(45)が「今日一番盛り上がりましたね。大きな8点目でした」と喜ぶ1発だった。

前チームから主軸で捕手を担う背番号2。15日の初戦でファウルチップを右手小指に受けた。靱帯(じんたい)のほか骨もわずかに損傷。大会中の完治は難しいという診断だった。

下宿暮らしの坂根はスーパーに走り「苦くて嫌い」な煮干しを手にとった。同じタイミングで森田大翔(はると)内野手(3年)も「早く治せや」と煮干しを買ってきてくれた。我慢しながら食べに食べて2週間で4袋。牛乳も毎日2リットル飲んだ。必死な願いとカルシウム摂取のおかげか、痛みは引いた。医師には「予想より回復が早い」と驚かれた。

先発を外れ、代打でも結果を出せない大砲は悔しさを胸にとどめていた。そんな状況で生まれた高校通算29号、自身の夏1号に「今まで感じたことのない気持ち。うれしかった。みんながここまで頑張って勝ち上がってくれた。3年間、一緒に甲子園を目指してやってきた仲間を信じていました」と感謝した。

送球も打撃も問題なし。「逆に力が抜けてスムーズに振り抜けている」と豪快に笑った。昨夏の決勝で1点も取れなかった大阪桐蔭・前田打ちへ。「もちろん出る準備はしています」。坂根の力が必要になるのは間違いない。【柏原誠】

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