今年もイチロー先生が、やってきた! 日米通算4367安打のイチロー氏(50=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が、4、5日の2日間にわたり北海道・旭川東高校のグラウンドで、同校の硬式野球部員35人を指導した。旭川市は昼間でも気温10度を下回り、冬の足音を感じるグラウンドはイチロー氏の指導で熱気を帯びた。

初日のフリー打撃では73球中の70球目の打球が校舎の3階の窓を直撃。窓が割れたのが数学の教室と聞き「数学の成績だけがーんと下がったらどうしよう」と笑いを誘った。73球目には下半身主導のフォームでこの日最長の推定飛距離130メートルとなる校舎を超えるスイングも披露。選手たちは「うわー」「えぐい」と大興奮だった。

同校は過去11度も夏の北北海道大会の決勝に進みながら甲子園に出場できず。昨夏も決勝で敗れ、イチロー氏は「そこで勝っていたら来てないです。11回目を経験した旭川東のきっかけになれたらという思いで来ました」と訪問を決めた。

身をもって厳しさを説いた。「僕は今現役じゃないけど、今もその日その日の限界を迎えるというのをテーマに毎日やっています」。日々の厳しさで50歳になってもなお、飛距離は上がる。チームメート同士も厳しいことを言い合える信頼関係を築くことで強さは増す。「全体がそうなったらものすごく強いチームになる」。個々の技術、チーム力が上がることが壁を破るポイントと導き出した。

今回は訪問を初めて事前に選手に告知した。多くの質問を受け、会話を大切に、丁寧に答え指導した。「みんなの活躍をシアトルから、俺は本当いっつもチェックするからね」。悲願をかなえる道しるべを示したイチロー氏。長い冬を迎える選手たちの背中を力強く後押しした。【保坂淑子】

 

▽旭川東・西中剛志監督(43) 有意義なというか、何事にも代えがたい貴重な2日間を経験させていただいた。期待に応えられるように、明日からの練習で生かしていきたい。

▽旭川東・臼井颯汰主将 仲間への厳しさがチーム力を高めるために必要不可欠だとイチローさんの口から聞けた。これからそういう方針でいこうと思う。(旭川にイチローさんがいたこと)あり得ない(笑い)。こんなこと、あっていいの、みたいな(笑い)。