高校野球で、反発力を抑えた新基準のバットが初めて全国大会で使われた。明治神宮大会で北海(北海道)の全選手が使用。3安打1得点したが、延長10回タイブレークで作新学院(関東・栃木)に1-2のサヨナラ負け。明らかに打球速度、飛距離は従来より抑えられ、打球音も低く、鈍い。来春からの完全移行へ、各校は対応を迫られる。

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「コンッ」。聞き慣れない低音を残した打球はライナーで三遊間を抜けていった。2回、北海・大石広那捕手(2年)が最大径が3ミリ細くなった新基準バットでチーム初安打を放った。「ライナーというより、ライナーより低いゴロという意識をしっかり持って打ちました」と振り返った。

7回に連打が出たが安打はこの3本だけ。0-0で入った延長10回タイブレークでは連続死球で先制点を挙げたが、その裏に逆転負け。新バットではじいての得点は「0」だった。作新学院の外野は通常より5歩程度、前で守った。中堅手の小川亜怜(1年)は「音で芯じゃないと分かる。思った以上に伸びない。普通のバットなら抜けた打球があったと思う」と証言。「打球スピードがまず違う。細いので技術がないと当たらない。外野を越すのが大変。難しいです」。一塁で出場し、中前打を放った金沢光流投手(2年)は悩ましげだった。

平川敦監督(52)も「難しいと思いますね」と苦笑いした。「いい角度で上がっても失速する。時間がかかりますね。振らないとダメだけど、振り回していたらヒットは出ない。芯に当てる技術を磨かないと」とした。30のアウトのうち、飛球は7で外野に飛んだのは5。フライを上げないよう全員で徹底した。

優勝した道大会の後に持ち替えた。練習試合でも5試合。北海道の冬は長く、センバツ前の実戦機会は限られる。不利と分かっていたが、監督の提案に選手が応じ、貴重な公式戦での先行使用を決めた。

同監督は「(作新学院のエース)小川君のようなレベルの高い球を見て経験しておかないと、どうすべきかが分からないので」と説明した。同監督によるとバントも先端に当たると全く転がらないという。センバツまで4カ月。各校の対応が迫られる。【柏原誠】

◆低反発バット 来春の第96回センバツ大会と各都道府県大会から、金属製バットを、より反発の少ない新規格の「飛ばないバット」が全国統一で採用される。投手のリスク軽減を主目的として、日本高野連が昨年2月に決定した。現行の金属バットよりも、最大径が67ミリから64ミリに。芯の素材の厚みは1ミリ増えて4ミリ。金属のたわみが少なくなり、反発力は下がった。重さは900グラム以上の規定を踏襲する。