3月1日、まだ雪が残る岩手県花巻市内で、花巻東の卒業式が行われた。米国の名門・スタンフォード大進学が決まった高校歴代最多140本塁打の佐々木麟太郎内野手(18)を擁し、常に全国の注目の的だったチームで、プレッシャーと闘いながら、昨年は春夏の甲子園に出場し、夏は8強入り。笑顔の卒業式に隠された、彼らの3年間とは-。佐々木麟、筑波大・千葉柚樹内野手(18)、法大・熊谷陸内野手(18)、青学大・北條慎治投手(18)が、花巻東での3年間を語った。【取材・構成 保坂淑子】
-久しぶりの再会、それぞれの変化は?
佐々木 みんな髪が伸びたよね?
千葉 現役時代は短めだったんですが、ちょっと伸ばしてみました。
北條 麟太郎のヘアスタイルが決まってる(笑い)。
熊谷 かっこいい!
佐々木 天パでクリンクリンだから、整えました(笑い)。
千葉 北條は日焼けしたね。
北條 青学大の鹿児島キャンプに行ってたから。岩手と違ってあたたかくて。
佐々木 北條からピッチングの動画が送られてきたよ。「どや。お前、打てないだろ?」って(笑い)。
北條 調子いいんだよね~。
千葉 熊谷は調子どう?
熊谷 自分もキャンプで体作りやウエートなど、自分でメニューを考えてできて充実していたよ。
佐々木 千葉はどう?
千葉 やりやすい環境でやらせてもらっている。ここからさらに力をつけていきたいな。いや、麟太郎にはたくさん聞きたいことあるんだけど! いつ大学に行くの?
佐々木 ビザが取れたらすぐにでも。
千葉 え~さびしい…。
佐々木 バイバイって感じで(笑い)。
熊谷 スタンフォード大の授業にはついて行ける?
佐々木 やってみないと分からない!
千葉 急いでネットで調べたけど、レベルが全然違った!
熊谷 東大を超える大学だと聞いてビックリ!
北條 自分はキャンプ中で、先輩たちからもすごいなーって言われて。「スゴイんですよ~」って自慢しちゃった(笑い)。
千葉 自分たちのチームメートからこういう選手が出るのはスゴイです。
北條 新しい挑戦をする麟太郎はスゴいよ。
熊谷 治安は大丈夫かな…。気を付けてね。
-高校時代、一番の思い出は?
千葉 自分は甲子園です。夏は3回勝てた(8強入り)。大学でも甲子園の話で盛り上がるので、あらためて貴重な経験だったと思います。
熊谷 千葉は甲子園で苦しい場面で打ってくれて、よく助けてくれたよね。自主練習も人一倍やっていたし。
佐々木 主将として一番責任が重い中でも頑張ってくれたよね。
北條 中でも印象的だったのは、夏の甲子園での仙台育英戦。負けたけど、9回、8人がつないで4点を返し、麟太郎につなぐことができた(二塁ゴロ)。チームの中にも「麟太郎で終わるなら」と、納得して終われたと思うよ。
千葉 バッティングといえば麟太郎。麟太郎のチームでの存在感と、実績。悔いはないよね。
佐々木 自分は最後、一塁へのヘッドスライディングがぶざまな姿で。めっちゃ心残りなんだけど…。
-全国から注目されている麟太郎君がいてプレッシャーが大きかったのでは 佐々木 夏は4年ぶり。センバツも出場させていただいていたので、チームとしてのプレッシャーは感じました。
千葉 それも、県大会3回戦の水沢商戦で何かチームが吹っ切れるものがあったよね(0-1で迎えた7回、北條の2点本塁打で同点に追い付き延長11回タイブレークで勝利)。
佐々木 負けたらどうしよう、っていうプレッシャーから解放された。俺らは1度負けたようなもの。次の試合から、先制点を取られても怖くなかったよね。でも、俺の一番の思い出は2年半の寮生活。終夜ともに過ごしたチームメート。夜はいつもみんなで集まって話をしたよね。
北條 よく食堂で千葉と映画を見たね。
佐々木 千葉と熊谷の部屋がみんなが集まる部屋で。俺、柚樹と一緒に寝たことあるよね?
千葉 狭かった~(笑い)。
佐々木 ずっと話していたらそのまま寝ちゃって。
熊谷 麟太郎は1度寝たら、起こしても起きないから、絶対!(笑い)
佐々木 よくお風呂でも語ったよね。長風呂になっちゃって(笑い)。
-どんな話をしていた?
熊谷 恋バナはしないですよー(笑い)。
千葉 しょうもない話ばかり。
佐々木 柚樹の部屋でカラオケしたこともあったよね(笑い)。
千葉 マジ迷惑(笑い)! 人の部屋で大声で歌って。
北條 隣の部屋まで聞こえるし(笑い)。
佐々木 ね、寮生活はいい思い出ばっかりだよ。
-花巻東とは?
千葉 1年生から本当にキツいことが多かったんですが、最終的には結果も残せましたし。成長できた3年間でした。
熊谷 苦しいこともたくさんあったんですが、それを乗り越えて今の自分があると思うのでよかったと思います。
北條 精神的にも成長できた。ここで野球ができてよかったです。
佐々木 花巻東での野球が、人生の基盤、そのものになったと思います。
-最後に、お互いに大学生活での誓いを立ててください。
北條 3人とも4年後、プロに行ける選手だと思うので、自分も負けないようにドラフトで指名される選手になりたいと思います。
熊谷 6大学で試合で代表する選手になって、北條、千葉とは日本一をかける試合で対戦したいです。
千葉 大学でしっかり名前を残して、プロでプレーできるような選手になりたいです。
佐々木 みんな、大学日本代表での活躍が目標のひとつだと思うので、自分もアメリカのユニホームを着て、みんなと対戦できるように頑張ります!
◆佐々木麟太郎(ささき・りんたろう)2005年(平17)4月18日生まれ、岩手県北上市出身。幼少時から野球を始め、江釣子小1年時に江釣子ジュニアスポーツ少年団に入団。花巻東では1年春からベンチ入り。高校通算140本塁打(公式戦18本)。趣味はサウナ。好きな言葉は「追求心」。右投げ左打ち。184センチ、113キロ。
◆北條慎治(ほうじょう・しんじ)2005年(平17)4月30日生まれ、岩手・大船渡市出身。立根小2年時に立根野球スポーツ少年団で野球を始める。大船渡一中では軟式野球部。花巻東では1年秋からベンチ入り。趣味は音楽鑑賞。好きな言葉は「We can do it」。右投げ右打ち。184センチ、82キロ。
◆熊谷陸(くまがい・りく)2005年(平17)7月15日生まれ、岩手・北上市出身。笠松小1年時に和賀西イーグルスで野球を始める。和賀西中時代は金ケ崎シニアに所属。花巻東では1年春からベンチ入り。趣味は音楽鑑賞。好きな言葉は「ありがとう」。右投げ左打ち。175センチ、66キロ。
◆千葉柚樹(ちば・ゆずき)2005年(平17)5月27日生まれ、岩手・奥州市出身。姉体小2年時に姉体スポーツ少年団で野球を始める。水沢南中では軟式野球部。花巻東では1年春からベンチ入り。趣味は寝ること。好きな言葉は「貢献こそ活躍」。右投げ右打ち。181センチ、81キロ。