球児の夏に再び悲劇が起こった。全国高校野球選手権大会・大分大会開会式に参加し、学校に帰る途中だった県立森高校(同県玖珠町)の野球部員ら26人が乗ったマイクロバスが9日、大分県別府市の大分自動車道上り線で大型トラックに追突し、大破。助手席に座っていた野球部監督の教諭重光孝政さん(44)が死亡した。同副部長の高橋智彦さん(34)が重傷、22人が首の捻挫などの軽傷を負った。大分自動車道では09年7月、開会式に向かう私立柳ケ浦高(宇佐市)の野球部員が乗ったバスが横転し、部員1人が死亡する事故があった。

 事故が起こったのは9日午後1時55分ごろ。大分県別府市南畑の大分自動車道上り線を走行していた森高の野球部員ら26人が乗ったマイクロバスが大型トラックに追突した。バスの左前部が大破し、野球部の重光監督が頭を強く打ち死亡、同校の臨時講師の高橋副部長が重傷、22人が軽傷を負った。

 森高は同日午前に大分市内で開かれた大分大会の開会式に参加し、学校に帰る途中だった。バスにはレギュラークラスの2、3年生が乗っており、1年生は別のバスだった。

 同県警はバスを運転していた部員の保護者で自衛官の江藤久人容疑者(49)を自動車運転過失傷害容疑で現行犯逮捕。自動車運転過失致死傷容疑に切り替えて調べている。同容疑者は昨年から野球部のバスを運転していた。

 現場は片道2車線の直線道路で、緩やかな上り坂。バスは左側の走行車線を走行中、熊本県天草市の男性(50)が運転する活魚運搬用の大型トラックに追突したとみられる。重光監督が座っていた助手席付近が大きく破損しており、県警は追突した際の状況などを詳しく調べている。

 付近では09年7月にも、大分大会の開会式に向かう柳ケ浦高の野球部員が乗った大型バスが横転し部員1人が死亡、5人が重傷、37人が軽傷を負った。柳ケ浦高の事故後に大分県では、マイクロバスなどを運転する野球部の指導者や保護者を対象に、安全講習会への出席を義務付け。今年も6月から7月にかけて、週1回のペースで講習会を行ったばかりだった。

 亡くなった重光監督は同県の県立国東(くにさき)高出身で、ダイエーや阪神などで活躍した吉田豊彦投手(44=現楽天育成コーチ)の同級生。亜大卒業後、柳ケ浦高のコーチを務めたのち、母校の監督に就任。04年夏の県大会ではチームを決勝に導き、甲子園まであと1歩のところまでいった。

 08年、森高に赴任。社会科の教諭として教壇に立つとともに、野球部を指導していた。娘の咲希さんも同校3年で野球部のマネジャー。事故に巻き込まれ入院した。同監督を知る同県の高校野球関係者によれば「とても熱血漢で、指導力は県内でも高く評価されていた」という。

 森高は過去に甲子園出場の経験はないものの、県北西地区の伝統校。12日の第1試合で中津北高との初戦が予定されているが、今日10日に保護者会を開き、大会への参加について話し合う。同日午後にも大分県高野連に学校としての意向を報告する。