<高校野球岩手大会:盛岡三13-1西和賀・宮古北・沼宮内>◇15日◇2回戦◇岩手県営野球場

 3回まで無安打無得点。0-10で迎えた4回2死一、二塁で打席が回ってきた。「みんながつないでくれた。打たないと…」。2回の守備でゴロを捕球した際に右手薬指と小指をつき指し、バットを強く握れない。右手は添えるだけ。ほぼ左手1本で初球を右前へ強く振り抜いた。

 津波で甚大な被害を受けた田老地区にある宮古北の生徒数は64人で、男子は24人しかいない。部員が7人だった昨春、約110キロ離れた秋田県寄りの西和賀と岩手初の連合チームを組んだ。昨秋からは沼宮内を加えた3チーム連合に。毎週末に集まって50試合以上の実戦を重ねた。携帯アプリLINEのグループ機能で「つらいけど頑張ろう」などと励まし合ってきた。

 3年生4人だけの宮古北は、秋以降休部になる。来春に1年生の入部希望があるかどうか見通しも立たない。中村勇斗(3年)は「野球部がなくなるのは寂しいけど西和賀と沼宮内も応援できる」と笑った。最高成績は89年の準優勝。決勝の相手は盛岡三だった。縁ある仲間と縁ある相手と戦った最高のゲーム。「悔いは残らない」。過去2年間刻めなかった「1」をスコアボードに残し、笑顔で最後の夏を終えた。【高場泉穂】