<高校野球山梨大会:東海大甲府9-8日本航空>◇21日◇決勝◇山日YBS

 東海大甲府が終盤の劇的な大逆転で日本航空を下し、4強入りした2012年以来2年ぶり12度目の甲子園の切符を手にした。5点を追う8回に2点を返して反撃開始。土壇場の9回表に3点を入れて追いつき2死一、二塁。石塚連太朗捕手(3年)が右前に決勝の適時打を放った。

 夢舞台へとつながる打球が、二塁手の頭上を越えていった。9回3点差を追いつき、なおも2死一、二塁、石塚が初球の甘く入ってきたカーブを振り抜いた。激闘に終止符を打つ右前適時打。「打った瞬間は頭が真っ白になった」。二塁走者がヘッドスライディングで生還するのを見届けると、一塁ベース上で、右手を突き上げ喜びを爆発させた。そして感謝の思いを込めてスタンドを見つめた。

 チーム全員の思いが集約された一打だった。「メンバーに入れない人の分までなんとかしてやろうと思った」。部員は同校史上最多の131人。他校のデータを集めに回ったメンバーもいた。データ分析に朝3時までかかることもあった。日本航空のエース井上容賢投手(3年)について、「データ班」の矢沢陸内野手(3年)はいう。「初球はカーブが多いと分かっていた」。井上対策に左投げの天野瑠太外野手(3年)は、打撃練習でカーブを投げ続けた。メンバーに入れなかった人の思いも背負い、石塚は初球のカーブを捉え、結果で応えた。今日3安打4打点の山田克志外野手(3年)も「サポートしてくれたメンバーに優勝という結果で恩返しできてうれしい」。まさにチーム全員でつかんだ甲子園だった。

 6回までは2点のリード。だが、7回に7失点で劣勢に立たされた。だが5点を追う劣勢でも誰もが諦めない。反撃の口火を切った望月大貴主将(3年)が言う。「相手が7点取れたなら、自分たちならもっと取れる。逆転できると思っていた」。その言葉通り、8回1死から左前打で出塁し、後続につなげた。五十嵐誉内野手(2年)も内野安打で続き、山田の右中間への適時二塁打などで8回に2点。9回も代打の星野祐作外野手(3年)が右前打で出塁。四球と安打で無死満塁。犠飛と左飛で2死まで追い込まれるも、そこから敵失と久野廉太郎内野手(3年)が同点打を放って、最後は劇的な逆転劇につなげた。

 2年前は4強に進出した。望月主将は「甲子園で勝つためにやってきた。1戦1戦戦って先輩たちのベスト4を超えたい」と意気込む。大逆転の勢いそのままに県勢初の優勝を目指す。【上田悠太】

 ◆東海大甲府

 1946年(昭21)創立の私立校。生徒数は759人(うち女子186人)、野球部は58年に創部で部員数は131人。甲子園出場は春4度、夏は12度目。主なOBはヤクルト村中恭兵、中日高橋周平、日本ハム渡辺諒。所在地は甲府市金竹町1の1。渋谷勇磁校長。◆Vへの足跡◆2回戦8-1韮崎工3回戦7-0谷村工・都留興譲館準々決勝5-0日大明誠準決勝9-2日川決勝9-8日本航空