北の「レッドキング」が、甲子園で大暴れする。第96回全国高校野球選手権(9日開幕、甲子園)の南北海道代表、東海大四が7日、兵庫県伊丹市内で紅白戦を行い、5番阿部佳志一塁手(3年)が右越えの二塁打を放つなど好調をアピールした。前日の打撃練習でも6本の柵越えを披露。得意の右打ちに磨きをかけて、大会第4日に対戦する九州国際大付(福岡)の左腕投手陣を粉砕する。

 「この顔が最大の装備です」と言ってはばからない。バットを高く掲げ、マウンドの投手を見つめる東海大四・5番阿部の眼力は風格十分。右打席に立つと、175センチの身長よりも大きく見えるから不思議だ。主力と控えメンバーが分かれて行った紅白戦で4回、3得点の口火を切る右越え二塁打を放ち「打撃の調子が良すぎて怖い。大阪入りして5キロ増量したんですよ。打球が詰まっても伸びるようになりました」と、手応えを口にした。

 巧みな右打ちにパワーも備える。今春の札幌地区予選で11打数8安打と打ちまくり、いかつい風貌から日下部憲和部長(62)が付けたあだ名が、ウルトラマンシリーズに登場する凶暴な怪獣「レッドキング」だ。今夏の地区予選は不振気味だったが、南北海道大会に入ってからは全4試合で安打をマーク。前日6日の打撃練習では15スイング中、6本の柵越えを披露するなど絶好調で、大脇英徳監督(39)は「単純なので、謙虚に打てば、今日のように逆方向へ打てる」と目を細めた。

 「一見、38歳ですが、正真正銘の18歳。親にも確認済みです」と真顔で言い放つ。高校入学時は捕手。練習に参加して、わずか2日目で腰を痛め、一塁手に転向した。1年をリハビリに費やした苦労人だが「野球が出来なくて記録員をしていた時、この見た目から、練習試合で相手校の選手に監督と間違われて、あいさつをされたことがあるんです」と、笑い飛ばす明るさで乗り切ってきた。

 初戦でぶつかる九州国際大付は、3人の左腕をそろえる。「1、4、5番と右の上位打線で、いい流れをつくれるようにしたい。この調子を維持して、謙虚にやっていきます」。その打撃で、21年ぶりとなる甲子園勝利を呼び込んでみせる。【中島宙恵】

 ◆レッドキング

 ウルトラ怪獣の代表格で別名「どくろ怪獣」。シリーズで初めて「強い怪獣」と設定されたことから、最強怪獣と呼ばれることもある。怪獣の中でもトップクラスの凶暴性と怪力の持ち主で、肉弾戦が得意。初代は身長45メートル、体重2万トン。名前は「レッド」だが、体は赤くない。蛇腹状の体が特徴。