リードオフマンがチームに勢いをもたらす。明日9日に開幕する第96回全国高校野球選手権(甲子園)に初出場する利府(宮城)のキーマンは、1番打者の万城目(まんじょうめ)晃太外野手(2年)だ。7日に大阪・交野(かたの)市内で行った練習では、シート打撃で二塁打を放つなど好調。強豪・仙台育英進学から一転、公立校で甲子園出場の夢を実現した好打者が、11日の1回戦・佐賀北戦での活躍を誓った。

 左打席に立った万城目のバットから快音が響いた。シート打撃で左腕山内望(3年)から、逆方向の左中間へ二塁打を運んだ。「いい感じだと思う」。身長161センチと小柄だが、鋭いスイングで球を捉えた。穀田長彦監督(44)も「一番当たってきている」と目を細める。打率3割7分の宮城大会よりも上昇気配で、佐賀北戦を迎えられそうだ。

 1番打者としてチームに勢いをもたらす。「厳しい戦いになる。かき回したい」と目を輝かせた。万城目が出塁して得点圏に進み、クリーンアップで得点するのが理想の攻撃。仙台育英の中等部・秀光3年時に全国大会を経験し、大舞台には慣れている。穀田監督は初戦のキーマンに指名し「自分を見失わないタイプ。立ち居振る舞いがしっかりしている」と信頼を置く。

 秀光から甲子園常連の仙台育英に進学できた。しかし「育英以外の野球を知りたくて。公立校という新しい環境を考えた」と、3年の9月に仙台市内の高砂中に転校。「勉強にも力を入れたい」と文武両道を掲げる利府に進んだ。部員の多くはスポーツ科学科だが、万城目は普通科に在籍。成績は「上の方」と言い、野球と両立させている。

 1年生だった昨秋の県大会後から約8カ月間、下級生の立場で主将を務めた。プレッシャーから食欲をなくし、野球の調子も落とした。6月に上野幹太(3年)に主将を譲り「気が楽になった」と笑顔も戻った。

 利府は東北6県の先陣を切り、万城目は最初に打席に入る。「思い切りのいいスイングをしたい」。公立校で甲子園出場を実現。次は83年の仙台商以来、31年ぶりの宮城公立校の白星を勝ち取る。【久野朗】

 ◆万城目晃太(まんじょうめ・こうた)1997年(平9)5月1日、仙台市生まれ。岡田小4年で野球を始め投手と一塁手。秀光中2年で中堅手として宮城県選抜、東北大会出場。利府では1年夏からレギュラー。現チームでは左翼手。161センチ、62キロ。左投げ左打ち。家族は両親、祖父母と弟。