<全国高校野球選手権:日本文理3-2東邦>◇18日◇2回戦

 日本文理(新潟)はドラフト候補右腕の飯塚悟史投手(3年)が9奪三振完投し、東邦の「バンビ2世」藤嶋健人投手(1年)に投げ勝った。

 負けるわけにはいかなかった。日本文理・飯塚が、言葉を選ばずに答えた。「自分たちは2、3年間やってきました。この前まで中学生だった子には負けたくないと思いました」。“バンビ2世”こと東邦・藤嶋は入学後4カ月余りの1年生投手。3季連続甲子園出場チームの柱が、奮い立った。

 “真のエース”の姿を見せつけた。初回。先頭を投ゴロに打ち取った後、2番打者に粘られた。フルカウントの10球目。低めの直球が決まり、見逃し三振。初戦の大分戦では初回に先制点を許したが、きっちり3者凡退に抑えた。「腕が振れて前回より楽に投げられました」と、苦手な立ち上がりでリズムを作った。

 調整法を変えたことが好スタートにつながった。試合前のアップでダッシュの本数を増やし、汗をかきまくった。「アンダーシャツを3枚は替えました」と飯塚。いつもは1枚替える程度。意識的に発汗を促すと体に切れが出て初回から球が走った。5回までに2点を失ったが、ボールになるスライダーやフォークを振らせる投球術を見せ、9回は3者連続空振り三振。最後の132球目は自己最速にあと1キロに迫る144キロを出した。

 昨秋の明治神宮大会、今春センバツは逆転負け。寮にある17部屋の扉には、8点をリードしながら終盤2回で逆転された明治神宮大会のスコアボードの写真が貼られている。自分たちで行った戒めが、夏の勝利へつながった。「逆転負けを2回しましたが、それがあっての今です」と、飯塚も過去を受け入れて成長した。エースが粘り、6回に4安打を集中させて逆転に成功した意味は、とてつもなく大きかった。【和田美保】